2008年7月22日(火)「しんぶん赤旗」

主張

社会保障抑制

「紙の上」の方針で命削るな


 来年度予算で福田内閣が、社会保障の自然増を二千二百億円も減らす方針を続けようとしていることに批判が広がっています。福田康夫首相と額賀福志郎財務相は、予算の大枠を示す概算要求基準(シーリング)に二千二百億円の削減を盛り込むと確認しました。

 小泉内閣以来の社会保障予算の抑制路線は、国民の命と暮らしを支えるべき社会保障が国民の命を削り、暮らしを破壊する本末転倒を引き起こしています。

「エイヤ!」と決めた

 社会保障抑制路線は小泉内閣以来の自公政府の方針です。小泉内閣が編成した二〇〇二年度の予算で社会保障の自然増を三千億円減らし、〇三年度から〇六年度まで毎年二千二百億円ずつ削減しました。〇六年の「骨太方針」は、〇七年度から一一年度まで毎年二千二百億円を減らし続けると明記し、社会保障予算を五年にわたって抑える路線を敷きました。

 〇六年の「骨太方針」の取りまとめ役を務めた与謝野馨・経済財政相(当時)は、最近の雑誌で次のように語っています。「率直に申し上げて、二二〇〇億円というのは紙の上で『エイヤ!』と切ったもので、実証的に検証した数字ではない」

 数字には何の根拠もないし、それによって国民生活がどうなるのかを考えもしないで、「紙の上で『エイヤ!』」と二千二百億円の削減を決めた―。こんなふざけた話はありません。

 その矛盾が噴出し、お年よりや母子家庭、生活に困窮した中小業者や若者など、社会保障の支えをもっとも必要とする国民が深刻な被害を受けています。

 お年よりの医療費削減を狙った後期高齢者医療制度で、お年よりはむりやり差別的な医療制度に囲い込まれ、負担増を強いられています。医師不足で産科・小児科をはじめ地域に不可欠の診療科が消え、政府の公立病院切り捨て政策が追い打ちをかけて拠点病院が閉鎖に追い込まれています。医療の提供体制そのものが崩壊の危機に直面している緊急事態です。

 最後の命綱の生活保護では申請さえ認めない「水際作戦」や道理のない「保護打ち切り」が横行しています。高齢者や母子家庭の生活保護や児童扶養手当を削減し、生存権を脅かしています。

 社会保障の抑制路線の転換が切実に求められているのに、福田内閣と自民・公明は一部の手直しで取り繕うだけで、抑制路線を進み続けようとしています。このままいけば遭難することが分かっているにもかかわらず、進路を変えられないなら、かじを取り続ける資格はありません。

財界言いなりを改めて

 社会保障抑制路線の大本には、社会保障を抑制し、企業の保険料負担を軽減する代わりに消費税増税をという財界の身勝手な要求があります。自民党の尾辻秀久参院議員会長らは社会保障の圧縮に反対しながら、消費税増税を主張しています。抑制路線への固執も、代わりの消費税増税も財界の手のひらの議論にほかなりません。

 消費税の増税は高齢者、低所得者の暮らしと中小企業を痛めつける最悪の福祉破壊です。財界言いなりの政治を改めて社会保障抑制路線を転換し、いき過ぎた大企業・大資産家減税を是正して財源を生み出す道に日本の進路を切り替えていくことが必要です。



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