2008年7月12日(土)「しんぶん赤旗」
大分県教員採用汚職 渦中の佐伯市
傷つく子の心
先生もお金出したの?
「全事実明らかに」
全国に波紋を広げている大分県の教員採用汚職事件。県議らの関与もとりざたされる事態になっています。佐伯市では校長、教頭の二人が逮捕され、同市の別の三人の校長、教頭も警察に出頭し自らの昇任試験をめぐる“贈賄”を説明するなど異例の展開をみせています。渦中にある佐伯市ではいま――。(竹原東吾)
「不快です」。小学校入学前の女児二人を連れ、買い物中の女性(35)はあきれ顔で話します。「子どもたちより自分が一番大事ということでしょう。このままでは、娘を学校にあずけるのが不安です。何かあればお金で解決されそう…」
小学一、五年の男児を孫にもつ女性(61)も「お金を使って教員になった人に子どもを教えてもらいたくない。早くやめてほしい」。
市民から聞こえてくるのは不信と手厳しい批判ばかりです。
信頼崩壊を危ぐ
佐伯市では事件を機に、市内三十三の小学校のうち、五校で校長・教頭が逮捕や「年休」を取得するなどして不在となる事態が続いています。市教育委員会によると、校長と教頭がともに不在となる学校に対しては指導主事を派遣し、連絡・調整を図っているといいます。
市PTA連合会会長の梅田一弘さん(48)が危ぐするのは、汚職による子どもたちと教員との信頼関係の崩壊です。すでに、教員に対して「先生もお金出したの?」と聞く子どもが複数出てきた、と話します。こうした事態に梅田さんは、親と教員との連携を重視。県教委、市教委に対しては「何があっても子どもたちの心のケアをしてほしい」とカウンセラーの派遣などを強く要望しています。
佐伯市教育委員会によると、県内外からかかってくる抗議の電話は「一日、数十本」に上っています。
市教委は、八日に出頭した校長、教頭らの「汚職の事実をしっかり見極め、適切な時期に保護者や生徒たちへの説明を全市規模で行いたい」としています。
「改善の方向を」
佐伯市内の四十代の小学校教諭は、逮捕された小学校校長とは、かつて同じ職場の同僚だったといいます。「子どもの立場にたった良い教師だった…」。それだけに、「いまも(汚職が)信じられない」といいます。
同教諭は事件が生徒たちに及ぼす影響を懸念します。
「汚職した数人を罰して幕引きをはかれば、『隠して終わればいい』という意識を子どもたちに植え付けてしまう。悪いことは悪いと事実をすべて明らかにし、しっかり改善の方向を示すことが、子どもに対して責任を負う教育です。その姿勢を県の教育委員会が自らとるべきです」

