2008年7月9日(水)「しんぶん赤旗」

洞爺湖サミット

食料・原油高

投機マネー暴走に無策

「競争」あおる文言も


 食料の高騰や原油急騰の原因になっている投機マネーの暴走をいかに制御するのか。世界のリーダーたちに迫られている緊急課題です。ところが、北海道洞爺湖サミット(主要国首脳会議)に集まった主要八カ国(G8)の首脳には投機マネーの暴走に向き合う姿勢が見られないどころか、「市場競争」を加速する文言を盛り込んだ宣言さえ発表しました。(金子豊弘)

 「食料価格と燃料価格の高騰という二重の危機に際し、最も弱い立場の人々を救うことができるか、グローバル・システムが試されている。失敗は許されない」。サミットに出席した世界銀行のゼーリック総裁は北海道留寿都村の国際メディアセンターでの記者会見で危機感をあらわにしました。

 サミットに出席した国連の潘基文事務総長も、「世界は、三つの同時危機に直面している。それは食料危機、気候変動の危機、開発問題の危機だ」と警鐘を鳴らしました。

 その危機の引き金を引いている一因に大手金融機関などを資金源とした投機マネーの暴走があるのは、いまや明らかです。金融規制の緩和によって「自由」の羽を与えられ、暴れまわる投機マネーの規制について日米首脳会談では、「そこまで細かい話はありませんでした」(日本政府)。投機マネーの暴走は、人々の生存を脅かす「静かなる殺人」とまでいわれるほど。それを、「細かい話」だと言い切るところに、議長国としての日本政府の見識がないことが露呈しました。

グラフ

アフリカは規制要求

 アフリカの人々の声を首脳会議に届けようと国際メディアセンターで記者会見した非政府組織(NGO)のメンバーは「原油、食料の高騰が不安定を招いている。カメルーン、セネガルなどで暴動が起きた。アフリカは危機の時に入った」と訴えました。

 七日のG8首脳とアフリカ七カ国首脳との会談の席では、アフリカの首脳から「原油取引で過大なもうけを得るのは問題。この取引に課税する制度ができないか」と、投機マネーへの規制を求める声も上がりました。

 ところが八日発表された「世界経済」宣言で、石油高騰への対応として指摘されているのは、「商品先物市場の透明性の向上」という文言だけ。しかも、「開放的で競争的な資本市場は、経済成長を促進させる」と強調。投機マネーの制御どころか、暴走をあおるかのような競争強化をうたいました。

 G8の無策ぶりに、大手紙編集委員も「世界経済は深刻な問題に直面している。その時に、先進資本主義の陣営は戦略をなくしてしまったようだ」と指摘します。

 「投機マネーの規制に最も反対しているのは米国」(経済産業省幹部)です。その理由はどこにあるのでしょうか。金融問題が専門の相沢幸悦埼玉大学教授は指摘します。「米国政府と米国の金融街は人脈的にも一体化している。しかも規制策がとられて原油や穀物価格が下落すると石油大手企業や穀物大企業が損をしてしまう。金融、石油、穀物の三つの利害関係者が存在しているわけで、投機マネーを規制できないのはそのためだ」

飢餓解決逆行する

 サミットは、世界の人たちが切実に求めていることには向き合わないで、やってはいけないことには熱心です。

 「世界経済」宣言では、自国の食料供給を確保する動きを「保護貿易主義」として敵視。世界貿易機関(WTO)の多角的貿易交渉について「喫緊の課題として交渉妥結に向け取り組む決意を改めて表明」と強調しました。

 しかし、WTOルールにもとづく農産物の貿易自由化路線こそが、飢餓の原因になっています。実際、途上国の農産物の生産力を高めるどころか、農家向け補助金の削減を求めるなど逆に生産力を阻害します。貿易自由化が飢餓の解決に逆行することは、国連の人権理事会に提出された報告でも指摘されています。

 「過去十年間に、自由化と民営化はほとんどの国で急速に進展した。(ところが)かつてなく多くの人が恐るべき恒久的な栄養不足に苦しんでいる」

 食料やエネルギーなど人類の生存にかかわる問題を、市場任せにする市場万能主義に固執していては、解決の道筋は見えてきません。



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