2008年7月3日(木)「しんぶん赤旗」

スーダンへの自衛官派遣

派兵“先細り”打開狙う

現地からの要請もなし


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 福田康夫首相がアフリカのスーダン南部に展開するPKO(国連平和維持活動)司令部への自衛隊要員の派遣を表明したのを受け、防衛省は派遣人数や時期の調整に入りました。しかし、自衛隊派兵には国連やスーダン政府からの強い要請があったわけでもなく、援助関係者からも疑問の声があがっています。

 首相は六月三十日、来日中の潘基文国連事務総長に対し、「日本が平和構築分野で積極的に人材を派遣するための体制整備の一環」としてスーダンへの要員派遣を表明しました。

“実績”づくり

 首相は七日から始まる北海道洞爺湖サミットで「平和構築分野での人材育成」をアピールする意向です。サミットではアフリカ開発も主要議題の一つになっており、それに向けての“実績”づくりといえます。

 同時に、昨年一月に自衛隊の海外派兵が「本来任務」化したにもかかわらず、国民の批判の高まりや米国の先制攻撃戦略の破たんでインド洋・イラク派兵はともに“綱渡り状態”に陥っています。アフガニスタンへの地上部隊の派遣も検討されていますが、見通しが立っていません。PKO参加人数も五月末時点で三十六人、PKO法の派兵上限二千人を大きく下回っています。

 今回のスーダンへの自衛官派遣は、派兵の“先細り”を打開するための「派兵先探し」の結果ともいえます。

調査もせずに

 しかし政府はスーダンの現地調査すら行っておらず、現地の具体的なニーズも把握していません。NPO法人「アフリカ日本協議会」の稲場雅紀氏は、「現地では複数の日本のNGO(非政府組織)が援助活動をしており、自衛隊の活動の必要性は感じられない」と指摘します。

 政府はスーダン派兵について、「停戦合意」など「PKO五原則」(別項)を満たしていると判断していますが、これまでに他国が派遣した要員三十五人が死亡しています。防衛省幹部も「司令部のある首都は安全かもしれないが、その外は分からない」と言います。

 スーダン南部を含むアフリカでのPKOは、武力行使を許された「国連憲章七章型」と呼ばれるものが多く、そこへの自衛隊派兵は、憲法はもとより「五原則」に照らしても疑問符がつきます。

 このため、政府内には「まず司令部要員を派遣し、状況を見極めた上で次に地上部隊」という“二段階派兵”を模索する動きもあります。

 当面は二人程度の司令部要員の派遣が検討されていますが、いずれ本格派兵につながる危険があります。(竹下岳)


 PKO五原則 (1)紛争当事者間の停戦合意(2)紛争当事国によるPKO実施と日本の参加への合意(3)中立性の厳守(4)これらの条件が欠いた場合の部隊撤収(5)武器使用は隊員の生命・身体防護に限定


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