2008年6月30日(月)「しんぶん赤旗」

鉄鋼業界から研究資金

環境省検討会メンバー2人に

ぜんそく原因物質PM2・5

環境基準先送りの背景


 気管支ぜんそくなどを引き起こす原因の微小粒子状物質(PM2・5)の環境基準設定を検討した環境省の検討会メンバーに、大気汚染物質の主要な発生源である鉄鋼業界から研究資金を受けている委員が二人いることが、本紙の調べでわかりました。二人は、三十日に第一回会合が開催される同省の「微小粒子状物質リスク評価手法専門委員会」にも加わっています。


 この検討会は、「微小粒子状物質健康影響評価検討会」(座長=内山巌雄京都大学大学院工学研究科教授)。各地の大気汚染公害裁判判決と和解を経て、環境省が昨年五月に有識者十八人で立ち上げたもの。同年八月の東京大気汚染公害裁判の和解で、同省は検討会の結果を踏まえ、環境基準の設定も含めて検討すると約束していました。

 しかし、その検討会は、ことし四月にまとめた報告書で、「PM2・5が健康に影響を与えている」と認めながら「定量的な検討がさらに必要」などとして環境基準設定を先送りしました。

 この検討会メンバーのなかに、鉄鋼業界と普通鋼電炉工業会が資金を出し、年間約七千五百万円の研究費助成を行っている財団法人「鉄鋼業環境保全技術開発基金」(鉄鋼環境基金、理事長=嶋宏新日鉄副社長)から助成金を受けている委員が、判明しただけで二人いました。

 一人は、同検討会に三つある分野別ワーキンググループ(WG)の一つ、「曝露(ばくろ)WG」のグループ長を務める埼玉大学大学院理工学研究科教授で、助成対象の研究テーマは、「固定発生源からのガス 微粒子分別測定法の開発」など。

 もう一人は、東京女子医科大学名誉教授。同名誉教授は、本田技研工業会長が理事長で、トヨタ、日産、三菱自動車工業などのトップが理事に名前を連ねる財団法人「日本自動車研究所」の非常勤理事でもあります。


 PM2・5 空気中に漂っているチリのことで、浮遊粒子状物質(SPM)ともいわれます。そのなかでも特に大きさが直径2・5マイクロメートル(一マイクロメートルは百万分の一メートル)以下という目には見えないチリを「PM2・5」と呼んでいます。肺の奥まで入り込んで気管支ぜんそくやがんを引き起こす原因となります。



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