2008年6月26日(木)「しんぶん赤旗」

追及 燃料高騰

原油高騰 苦しむアジア


影響軽減へ補助金

農家・生保世帯などに増額

中国

 【北京=山田俊英】世界第二の石油消費国、中国は原油価格高騰のなかで、農家や生活保護世帯への補助金を増やし、生活への影響軽減に努めています。同国政府は、石油価格抑制策が国庫負担の膨張や供給不足を招くようになったため、二十日に石油製品価格の値上げに踏み切っています。

 ガソリンと軽油価格は8・5%、トン当たり千元(約一万六千円)引き上げられました。同時に、農家には一ムー(約六百六十七平方メートル)当たり五元を補助することになりました。バスやフェリー、タクシーなど公共輸送に運賃の値上げを認めない代わり、業者に補助金を増額します。

 電力料金は一キロワット時当たり〇・〇二五元引き上げる一方、住民用、農業用の電力料金は据え置きます。四川大地震被災地の料金も上げません。

 生活保護を受けている人には七月から、都市部で月十五元、農村部で十元の補助を増額します。

 中国は世界第五位の原油生産国ですが、原油輸入量も世界第二位とみられています。年率10%を超える経済成長が続き、五月の輸入量は前年同月比25%増と原油輸入は増える一方です。石油は戦略的資源として国の補助金で価格を抑え、ガソリン、軽油の小売基準価格は政府が決めます。急激な原油高のため製品価格が原油より安い逆転現象が起きています。このため、採算がとれない製油所の中には操業を停止するところが出ています。国の石油補助金が二〇〇七年、国内総生産(GDP)の0・9%(『瞭望』誌)にものぼりました。

 しかし、消費者物価上昇率を今年4・8%以内に抑えるのが政府の目標。石油価格が10%上がれば物価上昇率を0・4ポイント押し上げる(人民日報二十三日付)とみられます。

 ただ、今回の措置は一時的な対応です。中国政府は総合的経済政策である第十一次五カ年計画(〇六―一〇年)でGDPに対するエネルギー消費効率を20%上昇させることを目標としています。根本的には石油低消費国への転換を目指しています。

燃料値上げを与党支持

マレーシア 野党攻勢、政権揺らぐ

 【ハノイ=井上歩】マレーシア下院は二十三日、世界的な原油高騰で今月ガソリンなど燃料価格を大幅に引き上げた政府を支持する動議を与党の賛成多数で可決しました。アブドラ首相はとりあえずの危機をしのぎましたが、ガソリン値上げへの国民の不満は高く、野党は攻勢を強めており、政権基盤は揺らいでいます。

 同国国営ベルナマ通信などによると、下院本会議では燃料値上げをめぐる動議に絡めて、アブドラ首相不信任動議提出の構えを見せていた与党連合内の地域政党サバ進歩党の動向が注目されました。しかし、同党議員二人は欠席。支持動議を否決し、政権奪取に向けた勢いをつけようとしていた野党側の狙いはくじかれました。

 アブドラ首相率いる与党連合の国民戦線は三月の総選挙で、マレー系優遇政策や物価高騰で批判を受け、およそ四十年ぶりに三分の二の安定多数を割りました。その後、与党第一党で首相が総裁を務める統一マレー国民組織(UMNO)内からも公然と首相退陣要求が出るようになりました。

 世界市場での異常な原油高騰を受け、政府は今月五日、補助金で安く抑えてきたガソリン価格を四割引き上げました。この措置に国民の不満や政権批判が高まり、野党が主導する抗議デモも相次いでいます。

 シャリル・サマド国内取引・消費相は下院で「価格上昇は政府の制御を超えており、グローバルな現象の影響から国の経済を守りきる力や資源は政府にない」と訴えました。マレーシアは値上げ後もガソリン価格をアジア諸国内で最低に抑えています。


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