2008年6月19日(木)「しんぶん赤旗」
電機大手春闘
成果主義で賃上げ格差
今年の春闘で電機大手は二千円の賃金改善要求に対して軒並み千円の回答となりました。しかし、成果主義賃金のもとでは賃上げとならない労働者も多く、「すべての労働者の賃上げを」との声が上がっています。
■松下電器
昨年、賃金改善原資が一部の労働者だけが対象の育児手当などに回された松下電器。今年は、福利厚生の千円分の「ポイントサービス」や、初任給と年齢別最低保障本給の引き上げという賃金体系の是正にあてられました。賃金水準が電機連合の掲げる目標水準を上回っているためだと職場で説明されています。
ポイントサービスは商品券との交換や提携店舗・施設の利用に使えるものの、賃金ではないため退職金や一時金、残業手当に反映しません。
男性社員は、「よそに比べて高いといっても、来年度から五十代のほとんどを賃下げする制度を導入しようとしており、不安です」と話しています。
■東芝
東芝では職務給、初任給、年齢別最低賃金を引き上げますが、成果主義で全員が賃上げになるわけではありません。
職務給も人事考課によって決められ、今回の引き上げは、上位の等級は六千円、中位は三千円ですが、下位の等級はありません。
Aさんは、この職務給がつかない仕事のため、引き上げはありません。
「私の場合、それとは別の成果主義の考課が『A』だったため、四月から五千円上がったので救われました。しかし、『E1』なら一万二千円、最高の『E3』なら二万六千円で、五倍以上の差があります」
Aさんは、「物価高、税・保険料負担が増す中、賃上げ要求には遠く及びません。労働者はいかにいい評価をえて昇格するかに駆り立てられる仕組みになっています」と話します。
■日立
日立では、一律に五百円を引き上げ、残りの五百円は成果主義の評価に応じて配分するとしています。
「J1」から「J5」までの評価と、職群等級によって決まります。総合職五級でJ1なら八百円、評価がJ4以下ならゼロです。
Bさんは、「成果主義の賃金水準は〇四年の導入以来変わっていません。労働者はノルマの達成に追われ、教え合い・助け合いの雰囲気はなくなってしまいました。成果主義は廃止すべきです」と話しています。
■NEC
NECでは、千円は成果主義の評価に応じて配分されます。
二十九歳「A職群二級」の場合、評価が最高の場合は千二百円が加算され、逆に最低ならゼロになってしまいます。
NECで職場環境の改善をめざして活動している「NEC&関連労働者ネットワーク」は、成果主義によって中高年の賃上げは少ないことを指摘し、「労働者の要求・期待にまったくこたえていない」と指摘しています。
時間外割増は全社継続協議
今春闘では、時間外割増率引き上げも焦点となりました。長時間労働是正のため、電機連合(連合加盟)は今春闘で月四十時間を超えた時間外労働と休日労働の割増率を50%以上に引き上げることを要求しました。
しかし、経営側が強く抵抗し、加盟労組すべてで継続協議になりました。
NECでは、実際に働いた時間ではなく決められた時間を労働時間とみなす裁量労働制が導入され、残業代は事実上の定額制となっています。
Cさんは、「うちの職場では、実際に働いた分だけ時間外割増を申請できる労働者は二―三割ぐらい。サービス残業の温床になっている裁量労働制をやめるべきです」と話しています。

