2008年6月19日(木)「しんぶん赤旗」

ガス田開発 日中合意

東シナ海


 高村正彦外相と甘利明経済産業相は十八日に記者会見し、東シナ海ガス田共同開発について中国側と最終合意したと発表しました。中国が先行開発する「白樺」(中国名・春暁)と、調査段階の「翌檜(あすなろ)」(同・龍井)が対象。同様に開発が進む「樫」(同・天外天)と、未開発の「楠」(同・断橋)の扱いは、継続協議とします。日中が対立する排他的経済水域(EEZ)の境界線の問題には触れていません。これにより二○○四年十月以来の交渉は一応決着し、両国は近く条約締結交渉に着手します。

 四つのガス田はいずれも、日本側がEEZの境界と主張する日中中間線をまたぐ海域にあります。このうち白樺は、中間線の中国側に開発対象を限り、開発に当たる中国企業に出資。収益の分配にかかわる出資比率は今後の交渉に委ねますが、中国側が過半を確保する見通し。翌檜は原則として等分出資とし、双方で収益を折半します。樫、楠については、中国側が単独開発を譲りませんでした。

 日中間の懸案だったガス田問題をめぐっては、福田康夫首相と先月来日した胡錦濤国家主席との首脳会談で、中間線をまたぐ海域での共同開発で大筋合意。その後、両国が事務レベルで詳細を詰めていました。


解説

「ガス田」日中合意

対立避け、現実的な解決

 東シナ海のガス田開発をめぐる日中間の対立は、尖閣諸島領有権問題や歴史認識問題などと並ぶ両国間の懸案の一つとして扱われてきました。水産資源や鉱物資源の開発にかんする経済主権にかかわる問題だからです。この問題の根底には、経済主権が及ぶ排他的経済水域(EEZ)の境界が未画定だということがあります。

 日中間合意は、ガス田開発をめぐる最初の日中実務者協議(二〇〇四年十月)以来四年近くを費やしての結果ですが、EEZなど海洋の主権についての相互の主張を損なわない形での現実的解決にこぎつけたものです。

 中国が先行してきたガス田開発は、日本が主張するEEZ境界線(日中両国の海岸線からの中間線)の中国側水域で行われていますが、中間線から数キロしか離れていない工区もあります。このため日本政府は、海底のガス田は日本側にも及んでおり、日本側のガスが「吸い取られる」可能性があるとして海底調査を実施。国内の石油関連企業に試掘権を付与するなどの対抗措置も講じてきました。

 一方、中国政府は、中間線をはるかに日本側に越えた沖縄トラフ(海底の細長いくぼ地)までの大陸棚の経済主権を主張し、日本が主張する中間線を認めていません。また、中国政府は日本側水域での共同開発を提案していたものの、中国側水域での共同開発は受け入れないとの姿勢をとってきました。今回、中国側は最終的にこの姿勢を変え、自国水域内の共同開発にも応じたものです。

 二〇〇〇年十月に訪日した中国の朱鎔基首相と会談した日本共産党の不破哲三委員長(いずれも当時)は、両国間の海洋主権問題に関し、「日本と中国とのあいだでは、あれこれの問題で意見の違いや行き違いが起こることもありうるが、そのさい、問題をあわてて政治問題にすることをいましめ、実務的な解決のルールにのせる努力が重要だ」と表明していました。

 今回の合意は、解決困難な主権にかかわる問題も、両国間の平和的な交渉による解決が可能だということを示しています。(林信誠)


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