2008年6月17日(火)「しんぶん赤旗」

諫早干拓公金差し止め

漁民も農民も「開門を」

福岡高裁第一回弁論 原告側が陳述


 長崎県が諫早干拓農地へ公金を支出することは違法としてたたかわれている「諫早干拓・公金支出差し止め訴訟」控訴審の第一回口頭弁論が十六日、福岡高裁でありました。干拓事業の悪影響としては、漁業被害だけでなく、四月から干拓地で始まった営農でも、アオコの大量発生など調整池の水質が悪く農業用水として不適切であることが新たに分かったなかでの裁判。この日も原告の漁業者、農民ら三人と代理人弁護士が意見陳述し、農業と漁業が両立するためにも排水門の開門をと訴えました。

 長崎県島原市で漁船漁業と藻類養殖を営み、漁業六代目という原告は、諫早干拓工事が始まってからの有明海の異変と漁民の窮状を「いまとにかく魚が捕れない」と訴え。干拓事業の始まる前と後の変化として、「事業着工前の漁獲量を十割とすると、潮受け堤防閉め切り前の一九九七年に七割に減少し、翌九八年に六割、現在は三―四割に減少している」と陳述しました。

 魚が捕れないのは自分だけでなく、周辺地域も衰退しているとし、このままでは漁協自体も存亡の危機だと訴えました。最後に、「私たち漁業者の願いは有明海の再生です。その再生には開門しかありません。開門ですでに始まっている営農が阻害されることはありません。開門に必要な調査のためにお金を使ってほしい」と結びました。

 一九六七年から農業高校に勤務し、現在農業に従事しながら長崎県央農民組合の役員をしている、諌早市の原告は、諫早干拓地の営農募集が、一区画を三または六ヘクタールという大規模経営自体「農民の気持ちから外れている」「一般の農民を置き去りにした差別的な県税の支出であり、再検討すべきです」と訴えました。

 また、干拓地でうたう「環境保全型農業」とは名ばかりで、現地では水質汚染がかなりすすみ、収穫中のレタスの鮮度を保つために、どぶ臭い調整池の水をかけざるをえないと、現状を告発しました。第二回は、九月二十二日に行われます。


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