2008年6月11日(水)「しんぶん赤旗」

NHKは放送倫理違反

「慰安婦」番組訴訟

公正欠く報道

BRCが見解


 「放送と人権等権利に関する委員会」(BRC)は十日、NHK番組改変訴訟の高裁判決を報じた二〇〇七年一月二十九日のNHK「ニュースウオッチ9」について「放送倫理違反があった」との見解を示しました。BRCは、NHKと民放でつくる第三者機関BPO(放送倫理・番組向上機構)の中の委員会です。


 申し立てていたのは、市民団体「戦争と女性への暴力」日本ネットワーク(バウネット・ジャパン)。同番組が、ETV番組「問われる戦時性暴力」(二〇〇一年放送)の高裁判決について、一方的な解釈とETV番組への介入が疑われる自民党の政治家二人のコメントのみを報じており、公平原則に違反している、などと訴えていました。

 BRCの竹田稔委員長は、「申立人らの意見に一切触れることなく、自らの解釈だけを報じたことは、申立人らに対して公平・公正を欠き、放送倫理違反があった」と指摘。NHK自身が当事者という特殊性も考慮すると「よりいっそう慎重な取り扱いが求められる事案」だとしました。さらに、「意見が対立している問題については、できる限り多くの角度から論点を明らかにするよう」求めました。

 一方、判決の内容を誤って伝えたとまではいえないとして、訂正放送などは求めませんでした。右崎正博委員は、NHKに対して「本件の趣旨が報道されることで、申立人の救済になる」との考えを示しました。

 見解を受け、バウネットは「主張が認められて大変うれしく思います。今後、(NHKは)当事者としての立場と客観的な報道をしゅん別する報道姿勢を持つよう期待したい」とのコメントを発表しました。

 NHKのコメント 今回の決定を真摯(しんし)に受け止め、さらに放送倫理の向上に努める。


解説

“自民との距離”に一石

 問題になった「ニュースウオッチ9」で、NHKは原告・バウネットの見解に一切触れないばかりか、政治介入の当事者である安倍晋三首相と中川昭一政務調査会長(いずれも本件放送当時)のコメントだけ一方的に流しました。

 それが、公平・公正といえるのか。意見が対立する問題については、多角的に問題点を明らかにする、としたNHKの「国内番組基準」や「新放送ガイドライン」に照らしてどうなのか。高裁判決報道が「公平・公正を欠き、放送倫理違反があった」とするBRCの見解は、政府自民党との距離が近すぎるNHKに対し、一石を投じたといえるでしょう。

 NHKは、日本軍「慰安婦」問題を扱ったETV番組「問われる戦時性暴力」で、安倍氏らの主張をそんたくし、番組内容を大きく改ざんしました。その姿勢を断罪した高裁判決の報道で、再びNHKは自民党の意に沿った報道をしました。

 それが視聴者・市民の「知る権利」からみてどういう問題があるのか。BRCの見解が「放送がもつ社会的影響の大きさを軽視すべきでない」とし、申立人であるバウネットが「公平・公正を欠いた放送により著しい不利益を被った」と認めたことは、電波は誰のものかを考えるうえで、大きな意味があります。(板倉三枝)



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