2008年6月7日(土)「しんぶん赤旗」

後期高齢者医療 廃止法案参院通過

国民の怒り 国会動かす


 「うば捨て山」の医療制度をこれ以上存続させてはいけない―。六日の参院本会議で、後期高齢者医療制度廃止法案が一三三対九八の賛成多数で可決されました。四月一日にいったん始まったばかりの制度に、立法府の一つの院が明確に「待った」をかけたことは、制度存続の根拠を大本から突き崩すものです。国民の怒りの急速な広がりと、参院の与野党逆転状況が結びついた画期的な成果です。

「正当性」いえず

 後期高齢者医療制度の根拠となる医療制度改悪法は、二年前の二〇〇六年六月十四日の参院本会議で、自民・公明の与党が強行成立させました。当時の小泉純一郎首相が推進した医療「構造改革」の総仕上げという位置づけでした。

 当時、与党は、「超高齢化時代を展望した安定的な高齢者医療制度の創設」と自慢し、「安心の基盤である医療制度を子や孫の世代にまで引き継ぐ」(自民党・中村博彦参院議員)ために制度を成立させなければいけない、と力説していました。

 二年たったいま、与党から制度の「正当性」を語る言葉はすっかり消えうせました。「年齢」という線引きで高齢者を医療から締め出し、負担増を強いる制度の本質が隠しようもなくなってしまったからです。制度発足のその日に、「長寿医療制度」などと呼び替えをしなければならないこと自体、制度の破たんを象徴するものでした。

 野党の廃止法案の審議がされた三日の厚生労働委員会では、自民党の「厚労族のベテラン」である尾辻秀久元厚労相が「人間の作ったものに完ぺきなものなどあるはずない。私どもも反省している」と発言。別の自民党議員も「与党の責任も重大だった」などと公然と述べました。舛添要一厚労相まで「私は設計にはかかわっておりません。しかし、財政の論理が優先しすぎたと反省しないと」(五日の厚労委での答弁)などと言い出す状況です。

 このため与党側は廃止法案について、「廃止は無責任だ」という攻撃にほぼ終始しました。しかし、野党側は「間違いが明らかになっていながら引き返そうとしない与党の態度こそ無責任だ」(日本共産党の小池晃議員)と批判。参考人質疑(五日)では「もとの制度に戻すことは無責任でもなんでもない」(笹森清・労働者福祉中央協議会会長)という声が上がりました。

 与党内から、「至急元に戻して新しくもう一回考え直す」(中曽根康弘元首相、五月二十五日のテレビ番組)、「いったん凍結してゼロベースで国民的議論を」(堀内光雄自民党元総務会長、『文芸春秋』六月号)という声が噴出しています。

 与党側は、保険料の一部「軽減策」でごまかすことを狙っていますが、マスメディアからは「負担を減らせば高齢者の怒りが収まると考えているとすれば、本質が見えていない」(「毎日」六日付)と批判の声が上がっています。

署名も広がる

 制度の廃止を求める署名は草の根レベルで広がり、六百万人を突破しています。五百八十を超える地方議会が「見直し」を求める意見書を可決しています。制度に異議を唱える都道府県の医師会は三十以上です。

 政府・与党は、この民意の結晶ともいえる「廃止法案の参院可決」の重みを正面から受け止め、廃止法案を衆院で可決、成立させ、差別医政療制度の廃止に踏み切るべきです。(宮沢毅)



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