2008年6月5日(木)「しんぶん赤旗」

番組「偏向」攻撃 これまでもあったの?


 〈問い〉 自民党議員のNHK番組「偏向」攻撃のねらい、戦後の主な「偏向攻撃」とは?(長野・一読者)

 〈答え〉 5月の参院総務委員会で自民党・礒崎陽輔議員が、NHKスペシャルを「偏向している」と攻撃しました。やり玉にあげたのは、5月11日放送の「セーフティーネット・クライシス〜日本の社会保障が危ない」。保険料が払えず、国民健康保険証を取り上げられた人々を追い、社会保障の現状を検証した番組でした。自分たち自民党の失政を棚に上げ、番組の取材対象が日本共産党と関係の深い、民医連の病院だとして攻撃したのです。

 過去にさかのぼると、国会で圧力をかけられた番組には、1984年放送のNHK特集「世界の科学者は予見する・核戦争後の地球」があります。米ソの核軍拡競争が進行していた時に、核爆発が人類にもたらす“絶滅”の危機を警告した科学ドキュメンタリーで、世界でも反響を呼び、15カ国以上で放送されました。しかし当時、民社党の伊藤昌弘衆院議員は、「公共放送が片方の意見しか出さないとは一党独裁共産国の放送と同じ」と決めつけました。

 2年前の参院総務委員会では自民党の柏村武昭議員が、東京都の「日の丸・君が代」強制問題を報じた「クローズアップ現代」を取り上げ、「国歌・国旗に偏見を持たせるような番組」と言い立て、NHK職員の思想調査を要求。今年3月の参院総務委員会では自民党の世耕弘成議員が、NHKスペシャルは「格差とかワーキングプアの問題に偏り過ぎている」として会長に制作現場の監督強化を求めました。

 放送前に番組内容を変更させられたものには、最高裁で係争中のETV番組改変事件があります。当時、官房副長官だった安倍晋三氏は、NHK幹部に密室で圧力を加えました。

 共通するのは、自分たちの意に沿わない番組への攻撃であることです。これは憲法が保障する表現の自由、放送法の番組編集の自由を踏みにじるもので、国民の「知る権利」を脅かし、「電波・放送は政府のもの」だった戦前への回帰といえます。

 NHKは「核戦争後の地球」が攻撃された際は、副会長が国会で反論し、会長も「ジャーナリズムとしてするべき放送だった」と番組を守りました。ところが今回、福地茂雄会長(元アサヒビール社長)は、反論どころか現場の監督を約束しました。古森重隆経営委員長(富士フイルムホールディングス社長)は、番組への関与を強める発言を繰り返しています。財界出身のトップ二人が制作現場に口を出すのでは、政府自民党と呼応することになってしまいます。(板)

〔2008・6・5(木)〕


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