2008年6月3日(火)「しんぶん赤旗」
UR団地取り壊し・売却
今さらどこへ 高齢者に不安
東京・日野
「耐震強度不足」を理由に首都圏にある三団地の都市再生機構(UR)賃貸住宅の取り壊し、更地化、民間売却の計画がすすめられようとしています。ことし二月、URが、居住者に十分な説明もなく、だまし討ち的に発表したもの。突然、立ち退きを迫られた住民のなかで、怒りと不安が広がり、運動も始まっています。
対象は、千葉市幸町、埼玉県春日部市武里、東京都日野市高幡台の団地内にある一部住棟です。
URは「意向調査表」などを配布。当該の住棟に事務所を構え、執ように転居を迫っています。
昨年末、URは、十年間で八万戸の住宅を削減することなどを内容とした「UR賃貸住宅ストック再生・再編計画」を発表。そのまま残す団地と、「集約化」し、残地を民間に売却する団地などに仕分けする「方針」ですが、今回の取り壊しはその先取りともいえるものです。
売却迫る公明
こうしたなか、公明党議員が、対象団地の一つ、高幡台団地の住棟を取り壊した跡地を「デベロッパーに売却し、新しい商業集積ビルを再建せよ」と市当局に要求していることがこのほどわかりました。
三月五日、日野市議会第一回定例会の一般質問でのこと。公明党の峯岸弘行市議は、「URに対して、(取り壊し後の)建て替えが難しければ、民間のデベロッパーに売却する」「早期に新しい商業集積ビルを再建できるよう、市はあらゆる努力を惜しまないでいただきたい」と質問していました。
同団地の取り壊し対象の73号住棟は鉄筋コンクリート造りの十一階建て。一階には郵便局、診療所、集会所、銀行、商店があり、分譲とあわせて計約千七百戸ある同団地のいわば中心的建物です。それだけに取り壊し住棟だけではなく、団地全体の住民の生活にかかわる問題です。
署名運動開始
最近、結成された「73号棟に住み続けたい住民の会」は、「73号棟除却計画の撤回と速やかな耐震対策の実施を要望します」との署名を、現在居住する百九十戸弱の住民に訴え、過半数の九十七戸から計百四十六人分の署名を集めました。近くURに提出することになっています。
同棟には高齢者世帯が多く、「いまさら引っ越しなど考えられない」「現在の住宅はエレベーターがあるが、仮に団地内の別棟に転居となればエレベーターがなく階段での昇降になる。日常生活を送るのが困難」という不安の声があがっています。また、「なぜ、耐震補強工事ができないのか」「百歩譲るとしても、なぜ、建て替えしないのか」といった疑問も。
73号住棟に住む男性は「URは、73号棟は大地震がきたら倒壊のおそれがあると説明し、耐震改修は困難だといいます。でも本当なのでしょうか。残念ながら納得できる説明を聞くことはできませんでした。除却計画を撤回し、安心して住み続けられるように、速やかに耐震工事を実施してほしい」と語っています。
借地借家問題にくわしい榎本武光弁護士は「URは、耐震性を理由に建物の明け渡しを借り主に要求することはできません。耐震補強し、借り主の安心・安全を保障することはURの義務です」と指摘しています。(日本共産党国民運動委員会・高瀬康正)

