2008年6月3日(火)「しんぶん赤旗」

主張

食料サミット

危機打開に有効な国際協力を


 世界的な食料危機のなかで、三日から国連食糧農業機関(FAO)が主催する食料サミットがローマで開かれます。コメ、小麦、トウモロコシなど主食となる食料の価格が急激に上昇し、とりわけ貧しい国々の国民生活を直撃しています。食料サミットはこの事態に対処するため、国連の潘基文(パンギムン)事務総長が急きょ呼びかけたものです。

飢餓食い物にする資本

 経済協力開発機構(OECD)とFAOは五月下旬、今後十年間は食料価格が高止まりするとの見通しを発表しています。価格高騰には短期、中期の複合的な要因がありますが、その多くが人為的なものだとする理解が広まっています。国際的な協力と支援によって当面の危機を打開するとともに、問題解決への道を開くことが強く求められています。

 一九九六年にローマで開かれた世界食料サミットは、世界八億人の飢餓人口を二〇一五年までに半減するとの目標を掲げました。しかし、飢餓人口は逆に増加をたどり、十二年後のいま「危機」が叫ばれる事態にいたっています。

 食料サミットでは、緊急の食料援助をはじめ、食料輸出国による輸出規制の抑制、穀物価格高騰の要因の一つであるバイオ燃料製造問題、アフリカなど飢餓問題を抱える国々での農業生産拡大、地球温暖化対策などが議論されるとみられます。

 同時に、生きるのに必要な食料を入手できない層が拡大する背景に、利潤追求を第一にした資本の動きがあることは見過ごせません。

 その一つが投機です。世界の穀物相場に大きな影響をもつ米シカゴの商品先物市場には、ヘッジファンドとその背後にいる大手金融機関の資金があふれています。綿花の価格が「一日で倍になった」(米農業団体)という異常ぶりです。

 国際的な協力で実効的な投機規制に踏み出すことが必要です。商品価格の高騰は「市場の基礎的条件によるもの」として規制に反対してきた米商品先物取引委員会(CFTC)さえも五月二十九日、原油先物市場の「透明性の改善」策を発表しました。穀物市場の取引にかかわる措置も一部含まれ、米議会など内外の批判の高まりを受けて重い腰を上げざるをえなくなっています。

 穀物の生産・加工・流通を支配している巨大多国籍企業(アグリビジネス)も、投機とも連携しながら大もうけしています。最大の穀物メジャーであるカーギル社の利益は二〇〇八年一―三月期に前年同期比86%増と急増しています。

 ADM社の利益は同42%増で、穀物販売部門に限れば約七倍といいます。同社はトウモロコシを原料とするバイオ燃料製造を主導し、ブッシュ米政権のエネルギー政策のもとで原油価格高騰の追い風を受けて、利益を急速に伸ばしています。

 穀物を食用でなく燃料に使うバイオ燃料のブームには世界的に批判が高まっており、バイオ燃料製造に力を入れてきた欧州連合(EU)もその姿勢を変えています。

 投機資金や一握りの多国籍企業の利潤追求の手をしばることは、食料価格の安定に不可欠です。

農業構造の改革を

 中期的には、世界の農業構造の改革が欠かせません。食料危機に直面している地域をはじめ世界各地で、地域社会が必要とする食料の生産に欠かせない家族農家による農業生産を立て直す必要があります。輸出やバイオ燃料製造などに向けられた、農業生産のあり方を見直すべき時です。



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