2008年6月2日(月)「しんぶん赤旗」

年金も医療も

財源といえば消費税

自民論議に民主も呼応


 “社会保障財源の確保”を口実に消費税増税を求める発言が政府・与党で相次いでいます。六月中に発表が予定される政府の社会保障国民会議の「中間報告」をふまえ、自民、公明両党とも党税制調査会総会で増税論議を加速させる構えです。


 「(社会保障予算の自然増を)毎年二千二百億円削れというのは絶対無理だ。…消費税を上げるべきだ」(尾辻秀久参院議員会長、五月二十五日の講演)

 今の増税論の特徴は、医療、年金、介護などを切り縮めてきた社会保障予算抑制路線への国民の悲鳴を「消費税増税やむなし」へと誘導しようとしていることです。

 同党の谷垣禎一政調会長は、五月二十九日の日本経団連との政策懇談会で、「これまで二千二百億円の削減を続けており、こうしたのを何でも取っ払っていいというわけにはいかない」と強調。その上で、「結局、歳入をどうしていくかという議論をする時期にきている」と消費税増税への意欲もにじませました。

 社会保障予算の自然増を認めるにせよ、削減を続けるにせよ、消費税増税しかないという土俵づくりです。減税につぐ減税で大もうけをしている大企業に応分の負担を求めるという発想は、まったくみられません。

協議呼びかけ

 政府・与党は、消費税増税論議への民主党のまきこみを描いています。

 伊吹文明自民党幹事長は、後期高齢者医療制度にかかわり「保険料が将来、膨大になる可能性がある。(保険料率アップに)耐えられないとなると、税の議論になってくる。ぜひ税制協議に入っていただきたい」(五月十八日、テレビ番組)と発言。民主党の鳩山由紀夫幹事長に消費税増税に向けた税制協議を呼びかけました。

 鳩山氏は「消費税の議論がすぐできるとは思えない」としつつも、「消費税は将来、上げざるを得ないタイミングが必ず来る」と応じました。

 民主党は消費税率5%の維持を掲げています。しかし、昨年末にまとめた「税制改革大綱」で、消費税を「社会保障目的税化」し、将来的に「(税率)引き上げ幅や使途を明らかにして国民の審判を受け、具体化する」と打ち出しています。

 与党側が「民主党も(社会保障の)制度設計と財源、特に消費税の問題についての考え方を示さなければ、絵に描いたもちでしかない」(大島理森自民党国対委員長)などとけん制しているのは、民主党の足元をみているためです。

 実際、民主党内からは「政策において、財源問題がネックになりつつある」(峰崎直樹・参院財政金融委員長、五月二十六日付ニュースレター)、「(保険制度は)消費税率アップを抜きに議論できない」(吉良州司衆院議員、五月十九日配信メルマガ)という声もあがっています。

不公平な税制

 消費税は、低所得者ほど負担が重く、貧困と格差をいっそう広げる最悪の不公平税制です。

 社会保障のためと言って一九八九年に導入されて以降、税収は累計で百九十兆円。同じ期間に法人税率は12%も引き下げられ、法人三税(法人税、法人事業税、法人住民税)の減収は累計で百六十兆円にものぼります。消費税導入前と比べた軍事費の増加額の累計は二十兆円に達します。消費税の大半が法人三税の減収と軍事費の増加に費やされた計算です。

 大企業への大盤振る舞いと軍事費という「聖域」にメスを入れれば、財源は生み出せます。

 年金でも医療でも、財源といえば、結局は消費税にたどりつく―「二大政党」のこんな不毛な論議で国民は暮らしの明日を描けるでしょうか。(藤原直)



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