2008年6月1日(日)「しんぶん赤旗」
自・公の下心
消費税増税
福祉切り捨て「限界」 口にするが…
毎年、社会保障費の自然増を二千二百億円ずつ抑制する―小泉内閣いらいの自公政治による痛み強要が、国民の猛反発を受けています。後期高齢者医療制度への怒りは党派を超えて広がるばかり。あわてた政府・与党内から社会保障費抑制は「もう限界」との声も出ています。しかし、福田康夫首相は「抑制」にこだわり、「限界」議論も出口は消費税増税です。国民は、福祉切り捨ても庶民増税もごめんです。(山田英明)
介護保険改悪まで
軽度の要介護者を介護保険制度から排除し、給付費を年二兆九百億円(国費のみ六千百億円)削減―。衝撃的な試算が、五月十三日の財政制度等審議会財政構造改革部会に示されました。
「頭の体操にすぎない」「まだ最終結論は決めていない」。会合直後の記者会見で何度も語る同審議会の西室泰三会長(東京証券取引所会長)。一方、介護保険制度について「抜本的な見直しをやる時期に差し掛かっている」(西室氏)といってはばかりません。
「〇六年の改革姿勢(政府の『骨太の方針2006』)というものは、揺るぎのないものでなければならない」。額賀福志郎財務相は五月九日の記者会見でこう語りました。
「骨太の方針2006」に明記された、高齢化に伴い増加する社会保障費の自然増を毎年二千二百億円抑制する路線を堅持するとの表明です。
小泉内閣時代の〇二年度予算以降、社会保障費の自然増は毎年抑制(〇二年度三千億円、〇三年度以降二千二百億円)され続けてきました。医療、年金、介護、生活保護などの相次ぐ改悪で、抑制が具体化されました。
大きな怒りの前に
後期高齢者医療制度や年金問題にたいする国民の怒りの大きさに、政府・与党内にも「社会保障費抑制」路線にたいする動揺が広がっています。
「(社会保障費抑制が)そろそろ限界にきている」(舛添要一厚労相、四月七日の参院予算委員会)、「毎年二千二百億円削れというのは絶対無理だ」(自民党の尾辻秀久参院議員会長、五月二十五日の講演)
自民党の厚生労働部会などの合同部会は五月二十七日、社会保障の自然増削減に反対する決議をあげました。
一方、福田首相は、五月二十日の経済財政諮問会議で「『基本方針(骨太の方針)2006』にのっとって引き続き歳出・歳入一体改革に取り組む」ことを閣僚に指示。あくまで「抑制」路線にしがみついています。
経団連が“後押し”
かつて小泉純一郎首相(当時)は、「歳出削減をどんどん切り詰めていけば、やめてほしいという声が出てくる。増税をしてもいいから、必要な施策をやってくれという状況になってくるまで、歳出を徹底的にカットしないといけない」(〇六年六月二十二日、経済財政諮問会議)と語っていました。
「社会保障費抑制」路線による庶民への痛みの押し付けは命にかかわる事態にまで達しています。
政府・与党内にも「限界」の声が広がるなか、この事態を好機とばかりに、消費税増税によって懸案を一気に“解決”しようという動きが大きくなりつつあります。
日本経団連の御手洗冨士夫会長は「来年度からの基礎年金の国庫負担増、少子化対策、医療などの需要を考えれば、消費税引き上げは避けて通れない」(時事通信社などのインタビュー)と言明。桜井正光経済同友会代表幹事も「社会保障費抑制」路線の堅持を主張しつつ、「社会保障費は(歳出削減をしても)どんどん膨れ上がっていく。新たな税源を求めるか、その組み合わせ(が必要)」(五月二十七日の記者会見)とのべています。
政府は五月十九日、基礎年金財源に全額税方式を導入した場合の試算を公表。財源として想定されているのは消費税だけです。自民党部会の決議も基礎年金の国庫負担割合引き上げの財源を「税制抜本改革」=消費税増税で賄うことが前提。「新たな国民負担をお願いしなければならない時に、さらに社会保障の削減を行うことは、到底理解が得られない」というものです。
「聖域」をただせば
国民に痛みを押し付けつづけてきた「社会保障費抑制路線」はただちに見直すべきです。
その上で、大型公共事業の浪費をなくすととももに、大企業・大資産家優遇税制や五兆円規模に拡大した軍事費という二つの聖域をただせば、消費税増税に頼らなくても社会保障財源を確保することができます。
たとえば〇八年度予算でみれば、トヨタ自動車など大企業二十社だけで、研究開発減税は二千七百億円。これだけで、社会保障費の抑制分二千二百億円を上回ります。
こうしたゆがみをただす税・財政の抜本的改革でこそ、社会保障を持続可能なものにし、財政健全化の道を開くことができます。
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