2008年5月28日(水)「しんぶん赤旗」
NHK
「勤務中株取引」81人
報道情報利用の疑い94件
三人の職員による株のインサイダー取引を解明するためにNHKが設置した第三者委員会(委員長・久保利英明弁護士)は二十七日、調査報告書をまとめ福地茂雄会長に提出しました。
それによると、懲戒免職となった三人の職員に新たに不審な取引が浮上。事件で使われた報道情報システムのニュースと三職員の株取引記録を照合した結果、法令違反と認定された取引以外に二十二件の「疑わしい株取引」があることが明らかになりました。
全役職員・契約スタッフら一万三千二百二十一人を対象にした調査では、八十一人が勤務時間(休憩時間を含む)に取引をしたことがあると回答しました。報道情報システムを利用した疑いのある株取引として五十一口座九十四取引が浮かびましたが、インサイダー取引と確認できなかったとしています。
一方、聞き取り調査に対して七十五人が勤務中の株取引を認めましたが、六人が虚偽の回答をしていたことが判明。同委では「勤務時間中の株取引者はこれだけにとどまらない可能性がある」と警告しました。
同委はインサイダー取引が多発した原因として(1)倫理観やプロ意識の欠如やリスク管理の不在(2)組織として職業倫理を確保する体制を欠いていたと指摘。「報道機関・公共放送の使命」の議論を組織内で活発に行うことや、報道情報システムへのアクセス権を持つ者や報道業務従事者の株取引の全面禁止などの再発防止策を提言しました。
福地会長は「提言を真摯(しんし)に受け止めたい。勤務時間中に取引を行った職員については、就業規則に照らして違反があれば処分する」と語りました。
解説
ジャーナリストの精神欠落
第三者委員会の調査報告は、改めてNHKの深刻な実態を示しました。インサイダー取引を指摘された三人の職員は「損した分を取り返そうとした」などと弁明に終始するばかり。「『ジャーナリストとして許されないことをしてしまった』という悔悟の言葉は聞くことができなかった」と報告書は述べています。
さらに全役職員らの調査では、虚偽の報告があったことも分かりました。「勤務時間中に株の取引を行っている人がいると思うか」との問いには、合わせて五千人以上が「大勢いると思う」「多少はいると思う」と答えています。
第三者委員会は、次のような問題意識を提示しています。憲法が認める報道の自由は、国民の知る権利を保障するためのものであり、報道以外の目的で用いれば、取材の自由は危機に陥る―とするものです。
それに対して、福地茂雄NHK会長が述べたのは「違反があれば処分する」というもの。これでは、第三者委員会の提言を受けとめたとはいえません。「プロのジャーナリストとは何か、公共放送の使命とは何かの議論を活発にする」方向こそ、今のNHKに求められています。(渡辺俊江)

