2008年5月28日(水)「しんぶん赤旗」

核燃料サイクル施設

直下に活断層

M8地震の可能性も

青森・六ケ所村

渡辺・東洋大教授ら発表


 青森県六ケ所村にある日本原燃の核燃料サイクル施設の直下に未知の活断層が存在する―。渡辺満久・東洋大学教授、中田高・広島工業大学教授、鈴木康弘・名古屋大学教授のグループが二十七日、千葉市で開かれている日本地球惑星科学連合の大会で発表しました。最大でマグニチュード(M)8級の地震が起きる可能性があり、対応が必要だとしています。


図

 研究グループは、核燃料サイクル施設周辺の地形などを詳しく調べました。その結果、施設の東側の陸域で太平洋に向かって急激に傾斜しているところが長く続いているのを見つけました。傾斜している部分の幅は一―二キロメートルで、長さは約十五キロメートルありました。

 こうした地形は、地下に逆断層が存在することを示すといいます。研究グループが日本原燃の地下探査データを解析したところ、地上で見つかった傾斜と平行に傾いた地層があることがわかり、地下に長さ約十五キロメートルの逆断層が存在することを強く示唆していました。

 地層に含まれる火山灰などのデータから、この逆断層は三万年以内に活動したことがある活断層とみられるといいます。

 六ケ所村がある下北半島の東側の太平洋の海底には長さ約八十四キロメートルの大陸棚外縁断層が存在することが知られています。研究グループは、今回見つかった活断層が大陸棚外縁断層とつながっている可能性があり、そうだとすると、活断層の長さは合わせて約百キロメートルにもなり、動いた場合はM8級の地震が起きるおそれがあると指摘しています。

 日本原燃は昨年、核燃料サイクル施設の耐震性を、施設の近くを通る、長さ約六キロメートルの「出戸西方(でとせいほう)断層」が動いた場合を想定して検討しました。

 渡辺教授は、「地盤がずれて傾いたりしたときの対策がとられているか心配だ。この研究結果を踏まえて見直してほしい」と話しています。(間宮利夫)


解説

綿密な再検討必要

 中国・四川大地震の現地調査の報告をした静岡大学の林愛明(りん・あいめい)教授は、断層の上に建てられた建築物が軒並み倒壊していたことを紹介したうえで、「断層の上に建物を建てないようにする規制はアメリカにあるが、日本にはない」と指摘しました。

 再処理工場を含む核燃料サイクル施設は、大量の放射性物質を取り扱います。直下の活断層が活動して大地震に襲われたときの被害ははかりしれません。

 日本原燃が昨年、原子力安全・保安院に提出した耐震安全性評価結果では、出戸西方断層の活動による地震の揺れを最大と想定し、安全評価のための基準地震動を四五〇ガル(ガルは加速度の単位)としています。

 この四五〇ガルという想定は、東京電力が中越沖地震の起きる前に柏崎刈羽原発で想定していた地震の揺れと同じです。東京電力は今月になって、中越沖地震を受けて検討した結果として、基準地震動を四五〇ガルから二二八〇ガルに引き上げると発表しました。

 その根拠とされているのは、「F―B断層」と呼ばれる海底活断層です。この断層について、東京電力は中越沖地震の前までは活断層と認めませんでした。このことについて、渡辺教授や、中田教授らのグループは、同原発の設置許可申請書に、大規模な活断層を示す明らかな証拠があったと指摘しています。(『科学』一月号)

 中田教授らは、中国電力島根原発についても、活断層の過小評価を以前から指摘してきました。中国電力は、中越沖地震後の見直しの際に、ようやく過小評価を認め、基準地震動を三〇〇ガルから二倍の六〇〇ガルに改めました。

 原発などでは、地震の揺れを過小評価する傾向があることをこれまでの実例が示しています。地震が起こってから見直すのでは間に合いません。日本原燃は、研究者の指摘を真剣に受けとめ、綿密な再検討をすることが求められます。国には、それを実施させる責任があります。(前田利夫)


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