2008年5月27日(火)「しんぶん赤旗」

主張

裁判権の「密約」

独立国の名に値しない行為


 一九七四年に沖縄県・伊江島で起こった「住民狙撃事件」で、犯人の米兵に対する第一次裁判権が米側に帰属することを認める「密約」を日本政府が米政府とかわしたことに、沖縄の地元紙が社説で抗議するなど怒りが広がっています。

 国際問題研究家の新原昭治氏が入手した米政府解禁文書は、日本に裁判権が帰属すると決定しながら、米政府があとでくつがえした横暴な態度と、米側の圧力に屈服して裁判権を放棄した日本政府の卑屈な態度を克明に記録しています。ことは日本の主権にかかわる重大問題です。独立国の名に値しない日本政府の態度を許すわけにはいきません。

理不尽な米軍要求

 「伊江島住民狙撃事件」は、一九七四年七月十日、沖縄県・伊江島の米軍基地内で米兵二人が畜産用の草を刈っていた青年を追い詰め、六メートルの至近距離から照明弾を発射し負傷させた事件です。基地内での草刈りを認めながら県民を狙撃した米軍に抗議が殺到したのは当然です。

 この県民の怒りをかわすねらいもあって、米軍は初め、日本の第一次裁判権を認め、「公務証明書」もださないと決定し、公式に日本に伝えました。米軍地位協定では「公務中」なら米側が第一次裁判権をもつとしています。それを主張できなかったのは、米兵の発砲行為が米軍内部のきまりにも反していたからです。

 米政府文書は、発砲の権限を与えられていないのに米兵が住民を狙撃したため、「公務証明書」をださないとのべています。米軍からみても、日本が第一次裁判権を行使するのは当たり前だったのです。

 ところが、このあと、米政府は態度を一変させ、米兵の狙撃行為は、「公務」としての行為であり、第一次裁判権はアメリカがもつといいだしました。米政府と在日米大使館がやりとりしたなかであきらかになった理由は、「公務証明書」をださなかったら米国内が承知しないことや、「裁判権を行使し損なったら」、地位協定を結んでいる各国にも悪影響がおよぶからという理屈です。日本に裁判権を行使させたら、米軍が批判されるからといった身勝手な言い分が、主権国家同士の外交交渉で通用するはずはありません。

 米政府が理不尽な態度をとるのは、一九五〇年代以来の日米密約が背景になっています。五七年にナッシュ米大統領特別顧問はアイゼンハワー大統領に出した報告で、「日本にとりいちじるしく重大な意味をもつものでない限り、第一次裁判権を放棄することに同意している」とのべ、「密約」を認めています。

 伊江島の事件で政府が裁判権を放棄したのも、この「密約」のためです。日米が不一致のままでは「日米間の良好な関係を維持する点からも好ましくない」(一九七五年六月十三日深田宏外務省アメリカ局参事官)という政府の説明は、「密約」にそういいのがれでしかありません。

「密約」文書の公表を

 日本の主権よりも米軍の利益を優先させる自民党政治への批判をつよめることが重要です。

 核持ち込み容認の「密約」など日米安保条約や米軍地位協定の交渉過程のすべてを秘密にしていることも問題です。米政府公開文書を示しても、日本政府はその存在すら認めません。「密約」が政府の手をしばり、国民を苦しめているのに、「密約」隠しを続けるのは許されません。政府の情報公開方針にも反します。

 政府は、安保関連の日米交渉記録をすべて公表すべきです。



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