2008年5月23日(金)「しんぶん赤旗」
タリバンと和平協定
米国の反対押し切る
パキスタン
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【ニューデリー=豊田栄光】パキスタン政府は二十一日、北西辺境州のスワット、マラカンド両地区を拠点にする武装勢力(通称パキスタン・タリバン)と和平協定を締結しました。武装勢力との対話路線を重視するギラニ新内閣が米国の反対を押し切って進めたものです。
政府が軍・治安部隊を徐々に撤退させ、両地区でのイスラム法導入を容認する代わりに、パキスタン・タリバンは政府軍や政府施設への攻撃を中止し、同地区にある訓練キャンプを廃止することを約束しました。
政府交渉団は「和平合意は暴力を終わらせ、地域の恒久平和を保障するものになる」と評価しましたが、アフガニスタンのバヒーン外務報道官は「タリバンとの協定は状況悪化をもたらす」と述べ、パキスタン政府の単独行動を批判しました。
パキスタン・タリバンはアフガン反政府武装勢力タリバンの後方支援を担う一方で、パキスタン国内では自爆攻撃などを繰り返してきました。
また北西辺境州とアフガンに挟まれたパキスタン部族地域は「高度な自治」が認められ、政府の統治が及びにくく、多くの親タリバン武装勢力がこの「特権」を利用して活動を続けています。
アフガンでの対テロ戦争への悪影響を懸念する米国は、パキスタン政府が進める対話路線に敵対してきました。ネグロポンテ国務副長官は二十日の議会で、今回合意した和平協定について、交渉それ自体に懸念を表明しました。また、同副長官は部族地域が刑事訴追から逃れられる場所となっていることを指摘し、「過激派に(逃亡する)権利と能力を与えるような結果を米国は受け入れない」と語りました。


