2008年5月13日(火)「しんぶん赤旗」

米、麻薬犯罪取り締まり

黒人・白人で「格差」

米人権団体調査


 【ワシントン=鎌塚由美】米国の麻薬犯罪の取り締まりが都市部のマイノリティー(少数派の人種)を標的にし、白人と黒人の犯罪者の間に大きな「格差」を引き起こしていることが、米国の人権団体の調査で明らかになりました。

 国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチ(HRW、本部ニューヨーク)と、公正な刑事裁判制度を求めるセンテンシング・プロジェクト(本部ワシントン)が五日、それぞれ報告をまとめ、発表しました。

 HRWの報告は、「表面上は人種偏見がないことになっているが、米国の麻薬とのたたかいは圧倒的に黒人に対して行われてきた」と述べています。米国の人口構成で白人は約67%、黒人は約13%をそれぞれ占めています。麻薬犯罪による服役者の53・2%が黒人となっています。

 報告は、黒人服役者の38・2%が麻薬犯罪で有罪となっている一方、白人では麻薬犯罪の割合は25・4%だと指摘。三十四の州で、麻薬犯罪で懲役刑となる黒人男性は白人男性の十一・八倍、黒人女性では白人女性の四・八倍としています。

 HRWの報告担当者ジェイミー・フェルナー氏は「麻薬犯罪者のほとんどが白人であるにもかかわらず、刑務所に送られる犯罪者はほとんど黒人だ」とし、薬物乱用者への処罰の仕方を根本的に見直す必要があると強調しました。

 「センテンシング・プロジェクト」の報告は一九八〇年から二〇〇三年の全米四十三都市での麻薬犯罪の統計数字を分析。八〇年に始まった米国の「麻薬とのたたかい」で、黒人の摘発が225%増加した一方、白人の摘発の増加は70%だったとし、この「格差は麻薬の使用率の変化では説明できない」と指摘しています。

 同「プロジェクト」の政策分析者のライアン・キング氏は、「この傾向は、黒人の間で薬物使用率が高いからではなく、地方の当局者がどこで犯罪を摘発するかに依存している」からだと述べています。


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