2008年5月12日(月)「しんぶん赤旗」

主張

防衛省改革

危険な自衛隊の発言力強化策


 調達業者との談合やデータ捏造(ねつぞう)など、多発する防衛省の不祥事をきっかけにはじまった防衛省改革論議のなかで、自衛隊の発言力を増大させる議論が突出してすすんでいます。

 自民党の防衛省改革小委員会がまとめ、福田康夫首相に提出した「提言・防衛省改革」がその一つです。提言は、憲法九条に反するため“日陰者”といわれてきた自衛隊を政治の表舞台に立たせるのが狙いです。石破茂防衛相が検討しているのも同じ狙いです。「シビリアン・コントロール」(文民統制)と呼ばれる、政治が自衛隊を統制する現在のしくみをくつがえし、自衛隊の政治関与に道を開くものです。

海外でたたかう備え

 提言はこともあろうに、「自衛隊の憲法上の位置づけの明確化」を前提に、自衛隊の発言力をつよめるというのです。もともと憲法違反の自衛隊に、改憲を前提とした発言力強化策など許されるはずはありません。

 たとえば、提言は、首相秘書官に防衛省・自衛官出身者をあてるとしています。首相に直接、軍事的進言を行うためです。憲法の平和原則や国際政治、外交関係などをふまえるべき首相に軍事的進言は必要ありません。自衛官を国会説明員にするともいっています。制服の自衛官を答弁席に立たそうというものです。自衛隊の政治関与に道を開くものでしかありません。

 見過ごせないのは、文官優位をなくし制服優位をめざしていることです。代表的なものは、文官優位の象徴とされる防衛参事官制度の廃止です。防衛参事官は、防衛省の官房長や各局長などからなり、「防衛省の基本的方針の策定について防衛大臣を補佐」します。自衛隊立案の作戦計画も、防衛参事官が認めなければ、採用もされないしくみです。

 防衛参事官制度の廃止は、文官のチェックをなくし、自衛隊が防衛大臣に直接進言できる道をつくることにつながります。軍事知識に乏しい防衛大臣が、軍事部門を重用せざるをえない状況にするのが狙いです。

 いまでさえ政府・防衛省が秘密をたてに情報提供を拒むため、国会も十分にチェック機能が果たせない状況です。自衛隊に対する政治統制の緩和は、とりかえしのつかない事態を引き起こしかねません。

 自衛隊の発言力強化策は、政府が「専守防衛」も放棄して、防衛「庁」を「省」に昇格させ、「国際平和協力活動」と称して海外派兵の恒久化をめざしているだけに重大です。アメリカいいなりに自衛隊が海外で戦争することと一体不可分です。

 政府は、自衛隊出動の規模・編成・装備、出動の判断、日米共同作戦の範囲などをあらかじめ政治決定しておけば、「自衛隊の暴走という懸念は抑えられる」(第五回防衛省改革会議での柳沢官房副長官説明)といっています。自衛隊の権限を相当認める考えです。

 自衛隊の政治関与と暴走を許すような愚行は、やめるべきです。

誤りをくりかえすな

 政府が憲法九条をふみにじって自衛隊を創設したとき、「昔のような弊害を再びくりかえさせてはいかん」(一九五四年五月三十一日 木村篤太郎保安庁長官、初代防衛庁長官)といって、文民統制を採用しました。軍部に強大な権限をもたせたことが侵略戦争につながったという批判を無視できなかったからです。

 反省を忘れ、戦前の誤りをくりかえすことを許すわけにはいきません。自衛隊の発言力を増大させる策動に反対するたたかいが重要です。


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