2008年5月11日(日)「しんぶん赤旗」
社会と結ぶ療養所に
ハンセン病問題 風化させない
市民学会が集会 基本法の実現訴え
ハンセン病問題の解決、入所者の社会復帰や療養所の存続などの課題にとりくむ「ハンセン病市民学会」が十日、都内で集会を開き、八百人の参加者が「療養所の社会化」をテーマに、熱心に話し合いました。
全国ハンセン病療養所入所者協議会事務局長の神美知宏さんは、全国十三の国立療養所の入所者数は二千七百六十四人で、この一年間に百七十人が亡くなり、平均年齢も七十九・五五歳と高齢化していることをあげ「政府は入所者の減少に合わせて職員や予算を削り、療養所の自然消滅を待つ『立ち枯れ政策』をとっている」と告発しました。
ハンセン病国賠訴訟西日本弁護団の徳田靖之代表は「ハンセン病問題を風化、後戻りさせないために、国が必要な財政支出をし、療養所を地域の人が利用できる施設として社会に開いていくことが必要だ」と、ハンセン病問題基本法の成立を求めました。
谺(こだま)雄二ハンセン病国倍訴訟全国原告団協議会代表は「隔離された私たちの運動には『家族会』がない。裁判をたたかうなかで、療養所の外の支えてくれる仲間が『新しい家族』となり、私に『生きていていいんだ』という気持ちを取り戻させてくれた」とのべ、入所者が広く社会と結びつくことが人間回復の意味を持つことを訴え、感動を呼びました。
多磨全生園の地元である東京都東村山市の渡部尚市長は「療養所を永久保存したいという入所者のみなさんと一体になってすすみたい」とあいさつしました。
「ハンセン病問題の最終解決を進める国会議員懇談会」会長の藤井裕久衆院議員らがあいさつ。日本共産党の瀬古由起子元衆院議員も参加しました。
ハンセン病問題基本法 政府は小泉内閣当時の2001年、長く続いた強制隔離と人権剥奪(はくだつ)のハンセン病政策について謝罪し「(療養所への)終生の在園」「社会の中で生活するのとそん色のない生活環境と医療の整備」を約束しました。しかし、政府が十分な施策をとらないもとで、療養所を社会に開かれた医療・福祉施設として将来にわたって維持・発展させようと、基本法制定を求める運動が広がり、国会請願署名も83万人分を超えました。超党派の国会議員による懇談会が今国会中の同法成立を目指しています。

