2008年5月11日(日)「しんぶん赤旗」
新憲法案の国民投票実施
NLDは反対票訴え
ミャンマー
【ハノイ=井上歩】ミャンマーの新憲法案の賛否を問う国民投票が十日、実施されました。サイクロンで大きな被害を受けたヤンゴン、エヤワディ両管区の一部地域は二十四日に投票が行われます。結果公表はその後となる見通しです。
国民投票と新憲法制定は、軍事政権が発表する「民主化行程表」の一段階で、憲法制定後、二〇一〇年に複数政党による総選挙を実施するとしています。
ミャンマーの憲法は一九八八年に国軍がクーデターで停止。国軍は九〇年の総選挙で野党・国民民主連盟(NLD)が圧勝すると、「新憲法制定が政権移譲の前提」として選挙結果を拒否しました。国際社会の批判の高まりを受け、二〇〇三年八月に民主化行程表を発表。憲法の基本原則をまとめる国民会議に十四年以上を費やしました。
軍政主導でつくられた新憲法案(十五章)は、軍が「国政の指導的地位に参加できる」と規定。三人の大統領、副大統領の一人は軍出身者となるよう定められ、大統領の要件にも「軍事の見識」を挙げています。議会の25%を国軍司令官が任命。各級議会、行政機関に軍司令官任命の軍人が配置されます。憲法を保護する責任機関も軍とされています。
軍政は国民投票にあたり、賛成投票を投じるよう運動を展開。自宅軟禁中のアウン・サン・スー・チーさん率いるNLDは「軍支配を永続化するもの」だとし、反対票を投じるよう訴えました。
サイクロンによる約百五十万人の被災者に救援が行き届かないことが問題となるなかでの国民投票の実施には、国連の援助関係者からも批判の声が出ています。

