2008年4月28日(月)「しんぶん赤旗」

列島だより

バス廃線 負けない


 各地の生活バス路線廃止で生活の足が奪われています。国の補助削減にたいし、市民生活を守ろうと努力する秋田県湯沢市(ゆざわし)と、市民の願いに背を向ける富山市(とやまし)からの報告と解説で、生活バスの問題を考えます。


足 確保へ乗合タクシー

秋田県湯沢市

 秋田県湯沢市では昨年九月、赤字で湯沢―沼館線(十六キロ)、湯沢―八幡線(八キロ)の路線バスの廃止が決まり、高校生、お年寄りの足の確保が課題となりました。鈴木俊夫市長(日本共産党員)は九月議会に乗合タクシーの利用を提案し全会一致で可決され、十月一日から導入されることが決まりました。

 乗合タクシーは、湯沢タクシー、里見タクシー、湯沢市の三者が協定を結び実現したものです。

助かってる

 昨年十月から今年三月までの六カ月間の乗合タクシーの実績は、湯沢―沼館線が一日三往復十三人、湯沢―八幡線は一日三往復十四人となっており、料金は距離に応じて二百円から六百円となっています。

 経費の負担は、運行経費から利用者負担を差し引いた不足分を湯沢市などが負担します。負担割合は、湯沢―沼館線が湯沢市30%、横手市50%、利用者20%、湯沢―八幡線が湯沢市73%、利用者27%となっています。

 利用者は高校生やお年寄りがほとんどで、「乗合タクシーがなければ、買い物、通学ができなくなる。助かっている」と喜ばれています。

赤字を補助

 湯沢市では二〇〇五年八月、中心街から五キロ離れた雄湯郷(ゆうとぴあ)ランドに雄勝中央病院が新築移転したことにともない、「通院の足の確保を」という市民の声にこたえて、シャトルバスも運行させています。小型低床式のバスはお年寄りや車いすの人も利用でき、喜ばれています。

 湯沢市は約四十路線に生活バス補助を出しており、年間七千六百万円の予算が組まれています。湯沢地方は羽後交通一社がバスを走らせており、赤字路線への補助は、赤字部分の75%を予算化しており、子どもやお年寄りの足の確保に力をいれています。(斎藤孝史・日本共産党雄平地区委員長)

突如廃止 「代替」求め運動

富山市

 富山市北部で、JR富山港線を路面電車化して再生した富山ライトレールが四月末で開業二周年を迎えます。人と環境にやさしいコンパクトシティー構想が強調されていますが、ライトレール開業と同時に、平行する路線バス二路線、浜黒崎線と蓮町経由四方線が、バス利用者への合意も無く急に廃止になりました。

困っている

 市中心部に向かう“足”を失った市民からは、「病院や買い物に行けない」「バス停がなくなってさらにお客が減って店がやっていけない」などの声があがり、バスが経由していた奥田地域など、かつては最も便利で歩いて暮らせる街だった地域が、一転して新たな交通不便地域になってしまいました。

 市民は「公共交通をよくする奥田の会」を立ち上げ、廃線となったバス路線についての代替措置と市からのバスへの財政支援強化を求めて運動を始めました。商店主や開業医、老人会などの協力も得て、〇六年十二月には、一カ月で約千七百人分の署名を集めて森雅志富山市長とバス運行会社の富山地方鉄道に提出しました。さらに〇七年九月には富山市議会へ請願署名を提出しました。

冷たい市長

 森市長は議会で、「(要望の)地域以上に深刻な交通不便地帯も郊外にはたくさんあります」「真に深刻な交通不便地域に至っていない」と市民の切実な願いに冷たい態度です。

 バス廃止の経過をみると、富山地方鉄道は〇五年十一月に、富山県生活路線バス協議会に一年後の廃止を申し出ました。県や市が参加しているこの協議会では、「一年たたなくても廃止できる」と、前倒しで〇六年四月末の廃止を決めました。市民の生活よりもライトレールの集客を優先した県・市の責任は重大です。

 住民主体の人と環境にやさしい交通実現へ、バスへの補助など国が積極的な支援をすべきです。(中山雅之・前富山市議)


国の補助は4% 改善こそ

山下芳生参院議員の話

写真

(写真)山下芳生参院議員

 いま地方のバス路線の廃止が増え続けています。路線バスは、高齢者にとって買い物や病院通いに不可欠な生活の足、命の足です。これまでの十一年間で九万キロ以上、地球二回り分のバス路線が廃止され、年々バス路線の廃止が増加しています。

 二〇〇六年度の路線バスの赤字額は三大都市圏で百七十四億円、地方で四百億円で、約七割のバス路線が赤字です。

 ところが、路線バスに対する国の補助金はピークだった一九九四年の百十億円から〇八年度には七十四億円に減っています。国は補助の要件を複数の市町村にまたがり、キロ数が十キロ以上、一日の輸送量が十五人から百五十人、運行回数三回以上ときびしくしました。

 その結果、乗合バスの全系統数四万七百九十六系統に対して、国の地方バス維持費補助の対象系統は4・4%にすぎません。残りの九割以上の赤字路線は地方自治体が独自に補助してバス路線を維持しているのです。

 私が三月下旬に調査に入った秋田県仙北市では、現在十二バス路線が運行されています。国の補助対象の路線がまったくありません。県の補助制度が見直しされると二路線しか対象にならず、存続の危機に直面していました。

 バスの利用者からは「地域にあったスーパーもなくなり、日々の生鮮食品や日用品の買い物にも角館(バスで四十分)まで週に二回は出かけなければなりません。バスがなくなったら私ら死ななきゃならない」という切実な声がだされました。地方にとってバス路線の維持というのは市場原理で考えるわけにはいきません。もうかるから走らせる、もうからないから撤退するというわけにはいかないのです。

 最大の問題は、地方のバス路線維持のための国の補助が少なすぎることです。

 道路特定財源は道路の整備に使われても、それを利用する地方のバス路線維持には使われていません。高速道路の建設費は一キロ当たり六十一億円。国のバス路線維持の補助金は、先に述べたように年間七十四億円。高速道路一キロちょっと分しかないのが実態です。道路特定財源を一般財源化し、医療や教育、そしてバス路線維持にも使えるようにすべきです。


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