2008年4月28日(月)「しんぶん赤旗」

核兵器ゼロ 新たなうねり

MD固執の米政権 科学者が批判

「スター・ウォーズ」レーガン演説25年

「核の脅威除く努力損なう」


 レーガン元米大統領が戦略防衛構想(SDI)を発表した「スター・ウォーズ」演説から、今年三月で二十五年がたちました。これを機に米国の専門家から、米政権が推進しているミサイル防衛(MD)計画を改めて批判する声があがっています。


 核問題で積極的に発言してきた米国の「憂慮する科学者連盟」のリズベズ・グロンランド、デービッド・ライトの両博士は連名で、「レーガンのスター・ウォーズ演説から二十五年」と題する論文を、核問題専門誌『ブレティン・オブ・ジ・アトミック・サイエンティスツ』に寄稿。MDは、技術的に確立される見通しはなく、またMDに固執することで核兵器廃絶への努力が損なわれていると警告しています。

「夢は今も夢」

 同論文は、レーガン大統領の演説後二十五年たった今も、技術的に「レーガンの夢は依然として夢のままだ」と指摘。「米国は、この夢を追いかけることで、自国の安全保障を強めるどころか、逆に弱めてしまった」とのべています。

 両氏は、米国防総省がいまなおMDシステムが現実に長距離弾道ミサイル(による攻撃)から米国を防衛できると実証していないと指摘。米政府監査院が二月に発表した報告でも、MDに関する実験は「実際には開発途上」であり、その有効性を現実的に議論する段階にさえ達していないとしていることを紹介しています。

 さらに、「予見できる将来、米国が現実世界の長距離ミサイルを防御できるMDシステムを開発する展望はほとんどない」と指摘。長距離ミサイルを米国に向けて発射するだけの能力がある国は、迎撃を避けるためのオトリなど、有効な対抗措置を講じるだろうと論じています。

中ロの増強も

 その上で、MD構想に固執することは核の脅威を取り除く努力を損なうと指摘。このことは、一九八六年十月のレイキャビク(アイスランド)での米ソ首脳会談で、「レーガンがMDに固執してゴルバチョフの核兵器大幅削減取り決めの提案をぶち壊したとき、明確に実証された」と指摘しています。

 両氏は「今日、ロシアまたは中国による、あらかじめ計画された対米攻撃のリスクは本質的にゼロだ」と指摘。にもかかわらずMD計画に固執することは、中ロ両国の核戦力増強を招くかもしれないとして、米政権を批判しています。


 ミサイル防衛(MD) 敵の発射した弾道ミサイルを早期にレーダーで捕捉し、目標に到達する前に陸上・海上発射型の迎撃ミサイルで打ち落とすシステム。相手の攻撃を無能力化し、先制攻撃を可能にするため米国が同盟国を巻き込んで地球規模で推進。日本政府もMDに協力し、航空自衛隊入間基地(埼玉)やイージス艦などに迎撃ミサイルを配備。米国は欧州でも迎撃ミサイル基地を計画中で、ロシアなどが強く反対しています。



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