2008年4月28日(月)「しんぶん赤旗」

ゆうPress

はい、こちら あおぞら労働相談所(1)

働き始めたさくらさん

事前の話と違います


 さくらさんは、ある会社で働きはじめました。「社会人1年生としてがんばるぞ」と張り切っていたのですが、採用担当者から聞いていた勤務内容(労働条件)と、実際の内容に違いがあり、悩みはじめました。先日、駅前で受け取った「あおぞら労働相談所」の案内ビラを思い出し、電話をしてみました。


残業続きでくたくた

 さくら もしもし、毎日夕方5時の定時に仕事が終わらず残業続きでクタクタです。残業してたら、係長が「早めにタイムカードを押しておいて」というんです。これっておかしくないですか?

 確かにおかしいですね。

 会社(使用者)には、社員(労働者)の労働時間を正しく把握して管理する義務があります。

 実際と異なる労働時間を記録させる係長の行為は、明らかに違法です。

 タイムカードが押されれば、そのあとは労働時間にカウントされなくなります。

 残業した仕事の内容や実際の退社時間をメモしておきましょう。

 会社は社員に、休憩時間を除いて「1週間に合計40時間、かつ1日に8時間」を超えて働かせてはいけません。(労働基準法32条)

 この「週40時間、1日8時間」を法定労働時間といいますが、それを超えて働かせる場合はペナルティーとして、会社は通常の給料に割増率を乗じた残業手当を支払わなければなりません。(同法37条1項、3項)

 また、会社は原則として、自由勝手に残業を命じることはできません。

 残業をやってもらうためには、社内の規則(就業規則など)で「会社は残業を命じることができる」との規定を定めたうえで、社員の過半数を代表する者と残業にかんする協定〔三六(さぶろく)協定といいます〕を結び、労働基準監督署に届け出なくてはなりません。(同法36条1項)

 ただ、法定労働時間には、例外的な取り扱いがあるので注意してください。従業員10人未満の小さな旅館や映画館、食堂などでは、法定労働時間を「週44時間、1日8時間」とする特例が認められています。(同法40条1項、同法施行規則25条の2の1項)

休日出勤命じられて

 さくら そうか、残業が当たり前じゃないんですね。もうひとつ質問です。「毎週日曜は休めるよ」と聞いていたんですが、実際は休日出勤を命じられてばかり。彼とデートもできなくて…。

 残業続きのうえに、休日もとれないなんて、たいへんですね。

 労働基準法では、会社は原則として、社員に少なくとも週に1日の休日を与えなくてはなりません。(同法35条1項)

 この「週1日の休日」を法定休日といいます。

 休日は、本来会社の命令で働く義務のない日ですから、上司が勝手に休日出勤を命じることはできません。

 休日出勤は、残業と同じように、就業規則などで定めることと三六協定の締結・届け出が前提となります。

 また、法定休日に出勤した場合も、割増賃金を受け取ることができます。(同法37条1項、3項)

 さくらさん、あなたのように日常的に休日出勤させられるのは異常です。思いきって上司に「日曜日は休みます」と申し出てはどうでしょう。

 同僚で同じ思いの人がいれば、いっしょにいう方がいいと思います。

 それが無理なら、記録しておいて、労働基準監督署や労働組合などに相談してください。

「三六協定」って何?

 さくら はい、わかりました。ところで、「三六協定」って何ですか。

 残業させたり、休日出勤させる場合には、会社はあらかじめ「社員の過半数を代表する者」との間で書面による協定を結んで、労働基準監督署に届け出ることが必要でしたよね。

 それを定めているのが、労働基準法36条なので、「三六協定」と呼ばれているんです。

 協定の内容は、(1)残業や休日出勤を必要とする具体的な原因や理由(2)対象となる仕事の種類(3)対象となる社員数(4)残業や休日出勤の限度などです。

 就業規則と「三六協定」は、しっかり確認してくださいね。

働き始めたみなさんの悩みにお答えします

 「あおぞら労働相談所」は、働きはじめた青年のみなさんの悩みにお答えしたいと開設しました。次週は、「給料が安くて、残業代も出ない」という、はるおさんの場合です。この欄は、村崎直人が担当します。


 労働基準法 日本国憲法25条の生存権や同27条の勤労権を実現するために制定された法律です。労働者が「健康で文化的な最低限度の生活」を営むことができるように、使用者が守るべき労働条件の最低基準を示しています。その最低基準を守らない使用者には罰則が科されます。労働基準監督署はその取り締まりをしている役所です。


お悩みHunter

喪中で年賀状出さず上司に怒られました

  昨年、身内に不幸があり、会社を数日休みました。すると新年会で、上司から「なんでオレに年賀状をださないんだ」と怒られました。身内に不幸があっても年賀状を出さなければいけないのでしょうか。私は怒られないといけないのでしょうか。(32歳、男性、東京都)

「怒る」のは筋違いですが…

  身内に不幸があった場合は、年賀はがきのかわりに「喪中はがき」を12月中旬までに出すのが一般的です。

 あなたが喪中休暇をとっても、上司はそれが喪中のためだとは気づかなかったのでしょう。いきなり事情も聞かないで「怒る」上司も、問題ですが、あなたから事情を説明するなど、もっとコミュニケーションをとるといいと思いますよ。

 もちろん、雇用契約上は、規定の労働時間以外の私的時間に、仕事や上司とのつきあいをする義務はありません。ですから、上司があなたに年賀(または喪中)はがきを出さなかったからといって「怒る」のは、法律的にはまったく筋違いです。

 だれでも仕事以外には交際したくない人はいますから、職場のだれとどのような距離感で付き合うかは、ケース・バイ・ケースですね。

 ただ、職場の上司や同僚とは、お互いの性格や家庭の事情などを知っているほうがチームワークを発揮できる場合もあります。仕事以外の人間的なつきあいを深めることで、仕事だけでなく個人的な悩みなども気軽に相談できる関係をつくることができます。

 一般的には上司への年賀はがきは、礼儀として送っておいてもいいのではないでしょうか。相手に対して日ごろの感謝の言葉や、あなたの仕事への熱意など、一言でも書いてあると、もらった方はうれしいものですよ。


弁護士 岸 松江さん

 東京弁護士会所属、東京法律事務所勤務。日本弁護士連合会両性の平等に関する委員会委員。好きな言葉は「真実の力」。


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