2008年4月26日(土)「しんぶん赤旗」

後期高齢者医療、農業問題、イラク派兵違憲判決

CS放送 志位委員長が語る


 日本共産党の志位和夫委員長は二十五日、CS朝日ニュースター番組「各党はいま」に出演し、後期高齢者医療制度、農業問題、イラク派兵違憲判決などについて、朝日新聞コラムニストの早野透氏の質問に答えました。


後期高齢者医療制度――中途半端な見直しでなく廃止しかない

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(写真)CS朝日ニュースター「各党はいま」でインタビューにこたえる志位和夫委員長

 志位氏は、十府県の医師会が後期高齢者医療制度の反対を表明したこと、三割の自治体が見直しや中止・撤回の意見書をあげていることを指摘し、「政治的立場の違いを超えて、ごうごうたる怒りの声が日本列島を包んでいる」とのべました。

 同制度は、保険料が二年に一回改定されます。志位氏は、七十五歳以上の人口が増えることなどで、保険料が際限なく上がる仕掛けになっていることを示し、「『団塊の世代』が後期高齢者になる二〇二五年には保険料は、平均で年十六万円になるという試算がある」と、保険料が現在の二倍になることを告発。「負担の問題とともに、もう一つの重大な問題が出てきた」として、「給付」の問題をあげました。

 志位 (中身は)すべてにわたって差別医療です。たとえば「健康診断」は、七十五歳をすぎたら義務対象から外す。通院の場合、糖尿病や高血圧に「定額制(包括払い)」が導入され、必要な検査や治療が受けにくくなる。入院の場合は「退院支援計画」をつくった病院に診療報酬を上乗せするなど病院からの追い出しをはかる。そして「終末期医療」の場合は「在宅死」を推進し、ここでも病院からの追い出しをやる仕掛けをつくる。健康診断、通院、入院、「終末期」、そして亡くなった場合は葬祭費まで減額される。すべてのところで差別医療です。

 早野 一体この制度の本質は何ですか。

 志位 七十五歳のお年寄りに対する差別を持ち込んで、医療費を削減しようということです。政府は、二〇二五年までに医療費を五兆円削減しようという目標を立てています。

 早野氏は、後期高齢者医療制度の導入を決めた〇六年六月当時の厚生労働相だった川崎二郎衆院議員が、朝日ニュースターの番組で、「当時、後期高齢者医療制度は議論にならなかった」と言及した一方、「日本共産党だけはちゃんと本質を突いていた」とのべたことを紹介しました。

 早野 この制度はどうしたらいいのか。

 志位 中途半端な見直しや一部手直しで解決する問題ではない。考え方の根本が間違っているのだから撤回・廃止させるしかありません。野党四党で廃止法案を出しているので、国会での成立をさせて廃止するしかない。

 早野 人生をどういうふうに大事にしていくかという思想がこの制度にはないなあ。

 志位 ないんですよ。長寿を罰するような制度ですよ。戦後の復興で苦労してきた人たちを『うば捨て山』のようなところに追いやる社会になったら、日本の社会はいよいよまともでなくなってしまう。

「農業再生プラン」――この道しかないという共感が広がる

 議論は、食料・農業問題に移りました。「共産党は秋田で農業シンポを開きましたね」との早野氏の問いかけに、志位氏は、「この問題を世界的な視野から考える必要があります」として、(1)新興国・途上国の食料需要の増大(2)バイオ燃料の原料としての穀物の需要増大(3)地球規模の気候変動で、オーストラリアで大干ばつが起きていること、それらに加えて投機マネーが穀物にも流れ込んでいることなどで、食料不足、食料高騰が起こり、世界的な食料危機が起きていることを指摘。「こういう世界になっているときに、日本の食料自給率が39%、穀物自給率が27%でいいのか。これは農家の方だけでなく、国民全体で考えるべき問題ではないか」と提起しました。

 その上で、日本共産党の「農業再生プラン」で、▽持続可能な農業経営の実現をめざし、価格保障・所得補償制度を抜本的に充実する▽関税など国境措置を維持・強化し、「食料主権」を保障する貿易ルールを追求する―などを提案していることを紹介しました。

 早野氏に「民主党の政策と連携できるのか」と問われた志位氏は、民主党の農業政策は農産物の完全自由化が前提であり、「考え方が違う」と発言。「完全自由化したら自給率は12%まで下がるという試算がある。それでは、どんな対策をしても日本の農業は持続不可能です。そこが民主党の政策との大きな違いです」とのべました。

 また、「民主党は所得補償一本になっています。農産物をつくろうとつくるまいと所得を補償するという考え方です。これでは自給率向上につながりません。自給率を上げるには、農産物をつくればつくるほど収入に結びつく価格保障を中心にすべきです」と指摘しました。日本共産党のプランを聞いた早野氏はこう感想をのべました。

 早野 共産党の提案はいま急に実現しなくても、将来「あのときのあれが正しかった」ということがありますからね。後期高齢者医療制度もそうですが。

 志位 そうですね。そういう方向にいかざるを得ない。この間、全国で農業関係者の方と懇談していますが、多くの方が「これしかない。これをやるかどうかだ」と言ってくれます。

イラク派兵違憲判決――政府は正面から受けとめよ

 イラクへの自衛隊派兵を憲法違反とした名古屋高裁判決が話題になりました。志位氏は「名古屋高裁は、イラクの実態や国会論戦をふまえ、非常に理性的で画期的な判決を出した」と評価。判決の大事な点として、(1)バグダッドを戦闘地域だと認定したこと(2)航空自衛隊の輸送行為自体も武力行使の一要素になり、憲法九条とイラク特措法違反だと断罪したこと―などをあげました。

 早野 政府の憲法解釈に従っても、イラク特措法を認めても、それに違反しているという論理でしたね。常識的な判決ですよね。

 志位 常識的ですよ。「武力行使と一体化したものはできない」という政府の狭い「武力行使」の解釈に照らしても違反するという判決でした。

 また、志位氏は「平和的生存権を具体的権利規定として認めたのが大事だ」と指摘し、「すべての基本的人権の根本に平和に生きる権利があるとしたのも画期的だ」とのべました。

 早野氏は、政府・与党が同判決を無視していることに怒りを表し、志位氏に見解を求めました。志位氏は「これは国会で大問題にしないといけない。いずれは国政の大問題になってきます。いったいいつまで派兵を続けるつもりかということを、正面から問題にしていきます」と表明しました。その上で、首相や閣僚が判決を「傍論だ」などとした一連の発言を批判しました。

 早野 これはどの党派を支持するかを超えて、政治の誠実さがない。

 志位 ないですね。防衛省の航空幕僚長は「そんなの関係ねえ」とまで言った。司法が道理をつくして出した結論を読もうともしない。はなから耳を傾けないというのはいったいどういう政権なのか。



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