2008年4月25日(金)「しんぶん赤旗」

「思いやり予算」の歴史的否決

“湯水のように税金”に怒り


 在日米軍への「思いやり予算」に関する新たな日米特別協定の参院外交防衛委員会での歴史的否決―。政府・与党は、この重みを正面から受け止めるべきです。

総額5兆円超

 参院であれ衆院であれ、条約が一院で不承認になるのは、現憲法下で初めてのこと。しかし、「思いやり予算」の特別協定の異常さに照らせば、不承認となるのは当然です。

 「思いやり予算」は、▽在日米軍基地で働く基地従業員の労務費▽基地内の光熱水料▽米軍の訓練移転費▽施設建設費―からなり、一九七八年度の開始時から三十年間で日本が支払った金額は、総額五兆円を超えます。

 在日米軍の特権を定めた日米地位協定さえ、米軍の駐留経費について「日本国に負担をかけないで合衆国が負担する」と定めており、「思いやり予算」はこの規定にも反するものです。

事実上の恒久化

 日米特別協定は、政府の立場からも地位協定による説明がつかないほど際限ない米国の要求に応えるため、八七年から始まったもの。

 政府は「暫定的な措置」と説明してきましたが、結局、二十年間も続いてきました。

 その間に、当初、労務費と施設建設費だけだった「思いやり予算」は、光熱水費や訓練移転費にも拡大、労務費もほぼ全額、日本側が負担するようになったのです。

 「暫定的」といいながら、いつまで継続するのか―。日本共産党の笠井亮議員の追及に、福田康夫首相は「今から予断するべきではない」と述べ、メドも示せませんでした。事実上の恒久化です。

 この異常な実態が明らかになるなか、〇六年の特別協定の延長の際には「(「思いやり予算」の)歴史的意義を深く理解する」として賛成した民主党まで、政府の見直しが不十分だとして今回反対に回ったのです。

 政府は今、「思いやり予算」のうえに、さらに米軍基地の強化をはかる在日米軍再編の経費負担にまで乗り出しています。米高官はすでに日本側負担が総額三兆円に達すると明言しています。

 井上氏が、再編経費のなかに、米兵のための娯楽施設建設の費用まで含まれるのかをただしたのに対し、石破茂防衛相は、ゴルフ場を例にあげながら、部隊の移駐・施設の移転に伴う場合については「福利厚生施設は排除されない」と述べ、否定しませんでした。

 いま国民の中で怒りが広がっているのは、国民生活に関する予算削減を強行しながら、米軍のためなら湯水のように国民の税金をばらまく政府の姿勢です。参院の否決は、この民意の表れにほかなりません。政府・与党は、今からでも、特別協定を撤回し、「思いやり予算」は中止すべきです。(田中一郎)



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