2008年4月16日(水)「しんぶん赤旗」

“明白な行政犯罪”

滝川市現地リポート 日本共産党 清水雅人市議

通院移送費削減は本末転倒


 厚生労働省が生活保護利用者の通院移送費を制限する理由にしているのが、北海道滝川市(人口四万五千人)でおきたタクシー代の巨額不正支払い事件です。真相糾明を求める市民のたたかいによって事件は、市と福祉事務所が暴力団員世帯の言いなりになって起きたことが明らかになっています。日本共産党の清水雅人市議のリポートを紹介します。


 生活保護費詐欺の罪で起訴されたのは、同市に住む山口組系暴力団員・片倉勝彦被告(42)と妻ひとみ被告(37)、タクシー会社役員ら四人。総額二億六百万円を市からだましとった疑いです。

 被告の片倉夫妻は滝川市で生活保護を受け、二〇〇五年五月、引っ越した札幌市でも継続して受給します。翌年三月、滝川市に戻り、生活保護を再申請。四日後から、タクシーを使い札幌市の病院に通います。片倉被告が通院移送費領収書を福祉事務所に提出したのは同年四月三日。六回分として百二十万円を請求します。

手続きは後回し 即日支払い決定

 市福祉事務所は、見積もり合わせ、嘱託医意見を聞くなどの手続きを後回しにしたうえでその日に、被告のいいなりに申請額の支払いを決めました。

 その後も土曜・日曜日を含め毎日のように札幌市まで通院したとして通院移送費を請求。妻も十月から同じタクシー会社を利用。夫妻が請求した通院移送費は月二千万円近くにのぼることもありました。

 タクシー会社社長らがこれに関与。個人口座に振り込まれたタクシー料金は、起訴事実より三千四百万円多い約二億四千万円にのぼっていました。半分近くを片倉被告らに還流したとされています。片倉被告らは、高級車十三台、マンション六カ所、貴金属を買い、ススキノ(札幌市内の繁華街)で豪遊し、覚せい剤の購入に使い、所属する暴力団の上納金にあてていたとの報道もあります。

 「最初から、不正請求とわかる」事件でした。ところが市は二十一カ月にわたって不正請求に応じ続けます。

 〇七年二月、監査委員が田村弘市長と副市長にたいし、通院移送費の監査の必要性を伝え、監査が始まります。しかし、市長は、通院移送費の支給をうちきることはありませんでした。福祉事務所が被害届をだす同年十一月十六日にも三百九十万円の通院移送費がタクシー会社社長の口座に振りこまれていました。

 市は被告が逮捕されてから内部検証委員会を設置。〇八年一月にだした報告書では、「職務執行に違法性は問えない」「支給を止める方法はなかった」「犯罪を見抜くことは不可能」と市当局の責任を回避するものでした。

 市民の怒りが爆発します。日本共産党議員団(二人)は、逮捕後の四カ月間、市議会本会議、委員会あわせて十八回の議会で真相糾明をはかってきました。

反社会的行動を把握しつつ放置

 同僚の酒井隆裕議員は嘱託医から「妻は夫のタクシーに便乗していたと思っていた」との証言を引き出しました。生活保護医療の相談役である嘱託医に情報を伝えることもなく、妻の通院移送費として七千七百五万円を支給していた福祉事務所のずさんさが明らかになりました。私は、十台以上の高級車を家の前に駐車させ、夜中に暴走行為を繰り返す容疑者の実態を示し、反社会的行動を把握しながら放置する福祉行政の異常さを追及しました。

 市民の声におされ、弁護士などを加えた「滝川市生活保護費詐欺事件検証第三者委員会」が一月三十日に発足。その中間報告(今月八日)は「タクシー料金は最小限度の額とは言えない」「病状調査が不十分」「第三者の医師の判断を仰ぐべく、検診命令をかけるのが通常」と市の対応に問題があるとしました。

 タクシー代の巨額不正支出事件は、行政犯罪といえます。これを理由に厚労省は、生活保護利用者が通院するときに欠かせない通院移送費の制限をはかろうとしていますが、本末転倒です。

 六日、開かれた学習・市民集会(主催・生活保護不正問題の住民監査請求をすすめる会)で高田哲名寄市立大学教授は「この事件は、行政の組織犯罪と考えられます。生活保護はすべての社会保障制度の基準です。制度の改悪を許さないのろしを滝川市からあげましょう」と語りました。

 「不正請求は許せないが、なすがままに公費を支出した市、福祉事務所の責任こそ問われる」。市民運動が大きく広がっています。


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