2008年4月16日(水)「しんぶん赤旗」

後期高齢者医療制度

“命”天引き

年金から保険料取り立て開始


 「制度を決めた自民党と公明党に抗議する」「私に早く死ねということか」―。高齢者を差別する「後期高齢者医療制度」による年金からの保険料天引きが実施された十五日、市町村の窓口には問い合わせや抗議の声が殺到しました。一方、社会保障推進協議会や労働組合、医療関係の団体は全国各地で同制度の中止・廃止を求める宣伝・署名や集会・デモ行進、電話相談などに取り組み、日本共産党も街頭宣伝しました。一時間で三百を超す署名が集まったり、電話相談に約百本の電話が寄せられたりとどこでも国民の怒りが爆発しました。


選挙で懲らしめる

札幌・西区 1時間に311人署名

 「介護保険料が九千八百円、こんどの保険料は一万八千円。私に早く死ねということだね」とペンをしっかり握る八十歳の女性。七十五歳以上を差別する後期高齢者医療制度の保険料が初めて年金から天引きされた十五日、札幌市西区の地下鉄琴似駅前でおこなわれた署名行動で、お年寄りの怒りが爆発しました。

 年金者組合や社会保障推進協議会、民主商工会のメンバー三十四人の呼びかけに、約一時間で三百十一人が署名に応じました。

 七十六歳の女性は「自民党は好きでない。選挙でばっちりこらしめてやる」と署名しました。「九十一歳のおばあちゃんは、保険証が届いた日はパニックになり、寝られなかったようです」と憤る女性もいました。

 道内ではこの日、札幌市西区のほか、札幌市大通で百十人、同白石区で百五十二人、旭川市で二百五十九人、帯広市で百六十人、室蘭市で百五十人、伊達市で百二十一人などいずれも三ケタの署名が集まり、市民の怒りの大きさが示されました。


 後期高齢者医療制度 75歳以上の高齢者を他の医療保険から切り離し、全員から保険料を取り立て、受けられる医療内容を抑制することを狙った医療制度。対象となるのは約1300万人(65―74歳の障害のある人も対象)。月1万5000円以上の年金受給者は、年金から保険料が強制天引きされます。天引きされない人も振替などで払います。保険料は2年ごとに改定され、高齢化がすすむのに応じて、自動的に引き上がる仕組みになっています。


832万人から

 厚生労働省は十五日、後期高齢者医療保険料の年金からの天引きが八百三十二万二千件であると発表しました。六十五歳から七十四歳の国民健康保険料の年金天引き(四月実施分)は五十三万五千件であることを明らかにしました。次回の天引きは六月十三日の予定です。

 後期高齢者医療制度で十五日に天引きされたのは国民健康保険に加入していた七十五歳以上の人たちです。健康保険組合など被用者保険に加入していた七十五歳以上や、被用者保険の扶養家族だった人たちの年金天引きは十月から実施されることになります。合計約一千万人の後期高齢者が年金から保険料を天引きされることになります。

 六十五歳から七十四歳の国保加入者約三百万人も十月から保険料の年金天引きがおこなわれます。

 年金天引きをめぐっては、行政手続きミスやプログラム処理の問題で、天引き対象者以外の人の保険料がいったん天引きされるケースが続発するなどの混乱が続いています。三十一自治体は準備が間に合わず、四月からの年金天引きを見送りました。


故人からも徴収

厚労省の不備

 後期高齢者医療制度の保険料を、すでに亡くなっている人の年金から誤って天引きする事態が全国各地で起きています。四月一日からの制度施行前に亡くなる場合を想定しなかった厚生労働省の不備によるもので、徴収にあたる各市町村は返還するとしています。遺族からは「死者からまで天引きするとは」と怒りの声があがっています。

 三月十四日に九十五歳で亡くなった女性=岐阜県池田町=のもとに、四月に入って保険料の天引きを知らせる年金払込通知書が届きました。二、三月分の年金から「後期高齢者医療保険料額 六千五百円」が引かれることが記されていました。

 誤徴収は、厚労省が制度施行にあたって、二、三月に亡くなった人も含め七十五歳以上の高齢者をすべて徴収対象にしたためです。厚労省高齢者医療企画室は「誤徴収の正確な数は把握していないが全国の自治体で起きている」と認めています。

 同室の担当者は「二、三月に亡くなった方だけ例外的に外すことはできなかった。気分を害される遺族の方もいるだろうが、そういう仕組みなのでご理解いただきたい」としています。

 池田町高齢福祉課の担当者は、保険料を返還するとした上で「そもそも死亡の情報を反映する仕組みがなかった」と説明します。

 亡くなった女性の長男(69)は「システムだから仕方がないと言われても、納得できない。機械的なやり方に怒りを覚える」と話しています。


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