2008年4月11日(金)「しんぶん赤旗」

中長期削減目標を明確に盛り込んだ法制度つくれ

温暖化対策 笠井議員の質問

衆院本会議


 十日の衆院本会議で地球温暖化対策法の一部改定案についての質疑が行われ、日本共産党の笠井亮議員が質問に立ちました。質問の要旨は次の通りです。


 地球の気候変動の重大性についての政府の基本認識をただしたい。

危機の根源に巨大資本の活動

写真

(写真)質問する笠井亮議員=10日、衆院本会議

 国連「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)の第四次評価報告書は、「このまますすめば、温暖化が突然の回復不能な結果をもたらす可能性がある」と警告しています。今後の気温上昇を産業革命前に比べて二度以内に抑えることは、人類にとって最重要課題であります。

 こうした危機をつくりだした根源には、環境破壊をかえりみず利潤追求第一主義に走ってきた巨大資本の活動があります。そこに焦点を当てた対策こそ求められています。

 温室効果ガス削減は、“やれるところまでやればいい”という問題ではなく、巨大資本の横暴を規制して“必ずやりきらなければならない”課題です。このことなしに、先進国の間で合意されている、「二〇二〇年までに先進国全体で一九九〇年比25―40%の排出削減」という共通の課題が達成できるでしょうか。

最大排出国のアメリカの問題

 第二に、最大排出国アメリカの問題です。

 アメリカは、温室効果ガス削減に最大の責任がありながら、京都議定書を離脱し、その実行に困難をつくりだしてきましたが、日本政府はこれに明確な批判をしてきませんでした。重要なことは、アメリカに最大排出国としての責任をとらせることであります。とりわけ米軍の排出量は莫大(ばくだい)であり、戦争こそが最悪最大の環境破壊をもたらすものです。

 日本政府は、きっぱりとアメリカに最大排出国の責任を果たすよう求めるべきです。

日本政府の提案 各国から批判

 次に、いま問題になっている「セクター別アプローチ」についてです。

 日本政府は、中期目標の設定で、「主要排出国が、セクター別の削減量を算出し、それらを積み上げて温室効果ガスの国別総量目標を設定する」としています。先のバンコクでのCOP(国連気候変動枠組み条約締約国会議)作業部会でも、その立場に立った意見書を提出しています。

 この提案は、「全体に削減の枠をはめることがまず必要だ」、「先進国の削減義務を放棄した提案」などと、各国からきびしい批判を受けています。それなのに政府は、「国別総量目標に代わるものではない」といいながら、なぜ、こんな提案に固執するのですか。

 そもそも、この「セクター別アプローチ」は、国際鉄鋼協会が提起し、日本経団連が全面的に支持しているものです。これは、原単位当たりのエネルギー消費量を指標に、生産量を見通して削減量を設定するもので、鉄鋼業界など多量に排出している産業界にとっては都合のいいものです。政府は、これで公平性が確保できるといいますが、それは鉄鋼業界など産業界に対して公平なのであって、全体の削減目標を低く抑えることにしかならないのではありませんか。

 途上国からはまた、「先進国と同様の責任を負わせるものではないか」と反対の声があがっています。国際鉄鋼協会は、すでに「最先端設備で極限近くで操業している。排出を大幅に削減することは不可能に近い」といっています。結局、先進国の鉄鋼業などの排出はそのままにして、途上国だけに責任を負わせることになるのではありませんか。

 この提案では、電力、エネルギー、運輸も含む八分野ごとのエネルギー消費量、今後の追加的削減対策、生産活動の見通しを業界が明らかにしない限り、いつまでも国別総量目標は設定されないことになります。産業界の意向のままに、国別削減目標をあいまいにし、目標の設定を先送りするものではありませんか。こうした目標策定のやり方を根本的に見直すことを強く求めます。

 外務大臣は、洞爺湖サミットでの「実効ある枠組みづくりに向けて国際的議論を主導する」と述べています。そうであるなら、G8(主要八カ国)の議長国として、いまこそ先進国日本が、みずから求められている高い国別総量目標を明確にし、法的拘束力のある数値目標を持つべきではありませんか。

3つの具体的手立てで質問

 そのうえで私は、以下三つの具体的手立てについて、政府の見解をお聞きしたい。

 第一は、政府が産業界との間で、温室効果ガス削減のための公的協定を結ぶという問題です。

 先月、閣議決定した「京都議定書目標達成計画」は、排出権取引制度や環境税の導入を検討課題と先送りし、日本経団連の「自主行動計画」頼みと、「京都メカニズム」の大規模な活用という内容になっています。これでは、日本の6%削減の国際的約束は何ら担保されません。削減目標を必ず達成するため、ペナルティーも盛り込んだ産業界との公的な削減協定を締結すべきではありませんか。

 第二は、再生可能エネルギーの活用を大胆に増やすことです。海外からの化石燃料の依存を大幅に減らし、風力、太陽光、バイオマス、小水力などの再生可能エネルギー活用を抜本的に強める戦略を立てるべきです。現状では、風力発電の設置は進まず、設備量は二〇〇四年の世界第八位から今年十三位にまで後退し、太陽光発電もドイツに首位の座を明け渡してしまいました。いまこそ自然エネルギー電力の固定買取制度の導入に踏み出すべきではありませんか。

 第三に、排出削減を促す経済的措置をとることについてです。

 いま、欧州をはじめ国際的にも、排出権取引の導入がすすみ始めていますが、日本の電力業界や鉄鋼連盟などの業界が否定的です。わが国でも、二酸化炭素の排出をコストに反映させる排出権取引制度や、排出量に応じた環境税の導入を図るべきではありませんか。

 私は、さる三月、欧州の地球温暖化対策に関する日本共産党調査団長として、ドイツ、イギリス、EU本部を訪れ、それぞれのとりくみを調査してきました。そこで痛感したのは、「現状よりはるかに強い切迫感が必要だ」という立場に立ち、政府と産業界が協定を結び、排出権取引や税制も組み合わせ、この問題に国民とともにとりくんでいることでした。イギリス議会では、削減を公的に義務化する世界初の気候変動法案の審議中で、ドイツ議会でも、この五月を目途に総合的な法制化がすすんでいます。

 わが国においても、中長期削減目標を明確に盛り込んだ気候変動の法制度をつくるべきです。



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