2008年4月7日(月)「しんぶん赤旗」

列島だより

消防広域化でどうなる


 政府が消防本部を減らす「消防の広域化」をすすめています。市町村単位の自治体消防体制を崩し、広い枠組みでの消防力はどうなるのでしょうか。各地で日本共産党が消防関係者などと、この問題を考え合い、住民の生命、財産を守るために活動しています。その中から東海地方からのリポートを紹介します。


政府「拘束しない」

政府答弁活用 各地で論議進む

 昨年の秋、愛知県内の消防職員から日本共産党国会議員団東海ブロック事務所(名古屋市)に、「消防の広域化について、問題点やよく分からないことが多いので、相談に乗ってほしい」という要望が寄せられました。

東海事務所質問相次ぐ

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(写真)佐々木憲昭議員

 そこで、佐々木憲昭衆議院議員が消防関係者と懇談して意見を聴取するとともに、各県下での自治体の動向もつかんで、十一月十六日に質問主意書を政府へ提出。同二十七日、政府から「自治体が自主的に判断するもので、国や県の方針に拘束されない」「広域化しない場合もいっさい不利益な扱いを受けない」という答弁を引き出しました。

 このことは大きな反響を呼び、国会の佐々木議員の部屋や東海ブロック事務所に、東海地方だけでなく全国各地から問い合わせがあいつぎました。そして、各地方議会でも党議員がこれを活用して論戦を展開しました。愛知県の東三河にある市の消防長は党議員に、「いい質問をしていただいた」と感謝をのべ、他党の議員も「大事な問題だということがよく分かった」と話しかけてきました。

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(写真)せこゆき子候補

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(写真)八田ひろ子候補

 また、せこゆき子、八田ひろ子両衆院比例候補らは、質問主意書と答弁の内容を載せた「東海ブロックニュース」をもって年末警戒中の消防団などを訪問しました。八田候補が訪れた愛知県の岡崎市や西尾市では、消防の幹部がすでに主意書を読んでいました。せこ候補は団員と広域化の問題を話しあうとともに、団員不足対策などさまざまな要望も聞きました。

 さらに、消防職員の中でも大きな動きがうまれました。日本では消防職員に団結権が認められず労働組合もないため、自主的に話し合う場がありません。

 しかし、この問題で東三河地方の消防職員有志が、地方自治の専門家を招いて広域化を考える集会を企画しました。豊橋市をはじめ広域化対象地域内の消防職員・団員、地方議員などのもとへ足を運び、参加の呼びかけを広げました。その結果、交代勤務で出席できない職員を除く非番の三割近い職員が参加し、日本共産党の地方議員をはじめ自民党県議や自治体の幹部職員など、満員の盛況となりました。

 集会の反響はその後も続き、参加できなかった職員の間では数十枚のDVDが複製され回覧されています。ある消防署では、職員が待機室のテレビで見ていたところへ、外出中の署長が戻ってきました。職員が「何を見ていたのか」と尋ねられたので、正直に話したところ、「それは大事だ」と署長室であらためてみんなで見たということもありました。

人員不足の改善策こそ

 二月二十七日には、佐々木議員が衆議院予算委員会の分科会で再びこの問題を質問しました。政府は「より多くの消防車が現場に行けるようになる」などと広域化の効用を宣伝しています。

 佐々木議員はこれに対し、国の「整備指針」は、火災発生から六分半以内で消火活動を実施しなければならないと規定していることも示し、広い地域からかけつけると言っても、時間がかかっては意味がないと指摘。とりわけ人員の不足は深刻であることを増田寛也総務大臣に認めさせるとともに、広域化よりも消防力不足を改善することが焦眉の課題だと強調しました。増田大臣も「(必要な予算を)手当てする」と答えました。

 今後、各県の「推進計画」をテコにますます広域化への誘導がはかれるなか、佐々木質問はいっそう大きな力を発揮することが期待されます。

 (日本共産党国会議員団東海ブロック事務所所長 西田一廣)


 必要な消防ポンプ自動車 総務省消防庁告知「消防力の整備指針」は、消防ポンプ自動車の配置基準を市街地人口規模三万人で三台、五万人で四台、十万人で六台、二十万人で九台、三十万人で十四台などとしています。たとえば五万人が六自治体なら二十四台が必要です。消防の広域化で六自治体分を三十万人にまとめると、面積が広くなるのに十四台に減少してもよいことになります。


三重県の場合

15→1本部に統合

「計画は机上の空論」批判次々

 三重県は昨年十二月、県内に現在十五ある消防本部を第一段階として二〇一三年四月から八本部に統廃合し、さらに第二段階で四本部に統合、最終的には「県域消防本部」一つにまとめようという消防広域化推進計画の素案を発表しました。

地域密着を消防長強調

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(写真)中野たけし候補

 これを受けて日本共産党三重県委員会は、消防・防災専門家の小竹三郎氏を講師に迎えて、消防広域化問題の党内学習会を開催しました。その後、各地方議員らが県内の消防長や自治体首長を訪ね、広域化が市町村消防の自主的判断に委ねられていることを佐々木憲昭衆院議員が国会質問などで確認していることも紹介し、消防問題での懇談を重ねています。

 私もこの間、各地を回って、この問題での懇談を意識的に進めてきました。その中で、北勢地域の消防長は、「市民の命を守る救急と、財産を守る消防、地形や産業形態も地域によって違う。署員も地元採用だから士気も上がる。地元で密着している範囲でやることが必要」と、市町村消防の意義を強調。また、大規模災害時は「相互応援協定を結んでいるので、今のままで十分」と話していました。

 北勢地域の別の消防長は、「実現不可能な一本化は反対」とし、「三重県のように南北に長い地形条件からみても、給与格差からみても一本化は無理」だと、問題点を指摘しています。

 自治体の首長からも、「松阪から紀州までを管轄するなんて机上の空論だ。広域化には断固反対していく」(南勢地域の首長)、「なぜ人口三十万人規模なのか。うちは今の時点で広域化しないといけないような不便はない。東京と違い、この地域は消防団の果たす役割が大きい。市としても消防団の強化を進めてきた。消防力の強化こそ必要だ」(北勢地域の首長)など、広域化への疑問や反発の声が聞かれました。

市町村への援助強めて

 マスコミ報道でも、中日新聞が「地域住民の命守れるか、効率化優先、現場から不安の声」との見出しで県の消防広域化計画を特集し、「職員八割が否定的」とのアンケート結果を報じるなど、広域化に疑問を投げかける論調が目立ちます。

 広域化するかしないかは、地域の消防に責任を負っている市町村が決めることです。広域化を押しつけるのではなく、消防力の充実・強化を図るために市町村への援助を強めることこそが今、大事だという日本共産党の主張は、どこに行っても共感を得ています。引き続き、各地での懇談を重ねながら、消防再編の押しつけを許さない世論を広げたいと思います。

 (日本共産党衆院東海比例候補・三重県委員会書記長 中野たけし)


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