2008年4月6日(日)「しんぶん赤旗」

後期高齢者医療制度

「電話鳴りっぱなし」

保険料通知に相談殺到 自治体窓口


 七十五歳以上の高齢者全員から新たな保険料を取り立て、受けられる医療サービスは制限する後期高齢者医療制度。保険料の徴収にあたる多くの市町村ではいっせいに、対象となる高齢者に、保険料の予定額を知らせる納入通知書の発送をはじめています。(宮下進)


埼玉・蕨市

 埼玉県蕨市では一日から三日までの間に、対象となる四千二百七十五人に通知書を送付しました。

 届いた通知書を見て初めて制度のことを知り市役所に来る人や、自分の保険料についてくわしい説明を求める人などで、窓口となっている保険年金課は毎日、対応に追われています。

 同課の担当者は「電話が鳴りっぱなしで、件数を記録することができないほどでした。家族が付き添い、直接お見えになる方もいますが、八十代、九十代の方はお越しになるのは難しいと思います。潜在的な問い合わせ数はもっと多いのではないか」と話します。

 多かった問い合わせは、保険料の算定基準にしている年金額に関するものでした。

 後期高齢者医療制度では、月一万五千円以上の年金を受けている人は、年金から保険料が強制的に天引きされます。

 届いた通知書には、保険料の額は記載されていますが、算定基準となる年金額などは表示されていません。

 年金額に関する問い合わせの多さは、わずかな年金から強制的に保険料を取り立てられる後期高齢者医療制度への不安や不満の広がりを示すものです。

 市町村は後期高齢者医療保険料の徴収にあたりますが、保険料額を決めるのは、運営主体である県の広域連合です。

 対応に追われる同市職員はいいます。

 「国や広域連合はいいですよ。決めたことをやれというだけですから。実際に細かいところまで対応しなくてはならないのは市町村なんですから」

 地域の高齢者の暮らしを知る市町村職員の苦悩がにじみます。

 一方、保険料の通知書を受け取った高齢者の思いはどうなのでしょうか。

 「自分の分の後期高齢者医療の保険料だけで、昨年度、わが家で支払った国民健康保険(国保)税とだいたい同じです。ここには妻(75)の分が反映されていないから、妻の分の後期高齢者医療保険料が、まるまる増えるということですね」

 通知書を見ながら、妻と二人で暮らす男性(77)はため息まじりに話します。

 国保税(料)の場合は、税額を決めるのは市町村です。

 蕨市は、周囲の自治体が毎年のように国保税を上げるなかでも、同税をすえおいてきました。

 「国保なら、市独自の施策で徴収も少なくすることができます。しかし、県の広域連合が相手では、私たちはノータッチになり、改善への道が遠のきます。本当にこうかつなやり方です」

 男性は怒りを込めてこういいます。

 「舛添厚労相があわてて『長寿医療制度』なんていいだしたが、まったく逆。『長寿やめさせる医療制度』ですよ。一日も早くやめさせたい」


 後期高齢者医療保険料 七十五歳以上の高齢者全員から徴収します。原則として、受け取る年金から天引きされます。年金額が月一万五千円未満の人や介護保険料と医療保険料の合計額が年金額の二分の一を超える人は「天引き」の対象外です。これらの人は、市町村に個別に納付しなければなりません。


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