2008年4月5日(土)「しんぶん赤旗」

タクシー殺人「他人事でない」

同僚ら「高橋さんは模範的プロ」

米兵の長距離は嫌


 米海軍横須賀基地の米兵(22)に無惨に殺害されたタクシー運転手の高橋正昭さん=当時(61)、東京都品川区=は無事故無違反の優良ドライバーでした。勤務先の職場では「犯人がやっと逮捕されたが、模範的なベテランドライバーを殺された。容疑者の米兵を許せない、本当に悔しい」などの声があがっています。


 品川駅。高橋さんを殺害した米兵がタクシーに乗りこんだ場所です。犯人逮捕から一夜明けた駅前ロータリーには、いつものように客待ちタクシーが列をつくっています。

 「あの日(十九日)は非番で休みだったが、勤務日だったら私が米兵を乗せていたかもしれない。決して他人事ではない」と語るのはタクシー運転歴三十年というベテラン運転手。

 品川駅は横須賀基地につながる京浜急行の始発駅でもあり、六本木など繁華街にくり出す米兵やアメリカ大使館、米軍宿舎のニュー山王ホテルもありタクシーを利用する米兵やアメリカ人は多いと言います。

 ベテラン運転手は「米兵の長距離は嫌だ。神奈川県の座間基地まで頼まれたが降りる時に料金メーターを倒されたことがある。六本木で予約待ちのとき、酔っ払った米兵がきて乗せろとさわぎ『予約車だから』といってもわからず車を何度もけられたこともあった」といまさらのように不安をにじませました。

 「高橋さんは亡くなったから言うわけじゃなく本当に模範的なプロドライバーでしたよ」と悔しがるのは同僚でもあり、高橋さんも所属する安全自動車労働組合品川(自交総連加盟)の蔭山英治執行委員長。

 高橋さんはタクシー運転歴四十年近い大ベテランですが無事故無違反の優良ドライバーでした。夜勤明けの午前三時の一番つらいときでも班長として出庫する同僚の車のタコメーターを全部取り換え、車が出やすいように並べかえるなど世話役をかって出ていたといいます。組合員としても春闘時期になると職場懇談会にもよく姿を見せていました。

 蔭山委員長は気持ちを抑えながらも、きっぱりといいました。

 「高橋さんは頼まれると嫌とは言えない、周りに気遣いのできる人でした。売り上げも上位で会社にとっても痛手です。高橋さんはシートベルトをしたままだった、クレジットカードを操作しているときにいっきに刺されたのではないか、軍人にしかできない手口だ。高橋さんの命を奪った米軍と日本政府の責任を徹底的に追及したい」


被害者所属の自交総連

米軍・政府に抗議

 全国自動車交通労働組合総連合会(自交総連)は四日、在日米大使館、米横須賀基地司令官、内閣総理大臣、外務大臣に対して、逮捕の遅れに抗議し、厳正な処罰、遺族への謝罪・補償を求める文書を送付しました。米兵に殺害された高橋正昭さんは、自交総連東京地連安全自動車支部の組合員でした。

 文書は「我々の組合員である高橋さんを残酷非道な方法で殺害した容疑者の米兵を強い怒りを込めて糾弾する」と述べ、同時に所属兵士に対して監督責任を果たしていない在日米軍と、横暴を容認する日本政府に「厳しく抗議する」としています。

 米軍による容疑者の身柄拘束から、神奈川県警の事情聴取まで十日間かかったことや、三日にようやく米軍の「好意的考慮」で身柄が引き渡されたことは「日米安保条約と地位協定による米軍優位、不平等な扱い」であり、遺族、同僚組合員など関係者の気持ちを踏みにじるものだと述べています。

 「何の落ち度もない無抵抗な運転者を後ろから襲う強暴な犯行は日常的に殺人訓練を行う軍隊の非人間的な教育と無関係とは思えない」と指摘し、「米軍基地があるがゆえに引き起こされる犯罪の根絶を願い、米軍優位の不平等な扱いの是正、米軍基地の縮小・撤去を求め、平和な日本をめざす」と表明しています。



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