2008年4月4日(金)「しんぶん赤旗」

霊視番組で報告書

BPOの指摘を受けて

フジテレビ


 霊能者タレントの江原啓之氏が出演した番組がBPO(放送倫理・番組向上機構)の放送倫理検証委員会から「倫理に反する」と指摘を受けていた問題で、番組を放送したフジテレビは二日、再発防止への取り組みなどをまとめた報告書を同局のホームページに公表しました。

 問題の番組は昨年七月放送の「FNS27時間テレビ『ハッピー筋斗雲』」。江原氏が一般市民を“ドッキリカメラ”的手法で霊視するというものでした。当事者からの訴えを受けたBPOは今年の一月、「『スピリチュアルカウンセリング』なるものを『おもしろく』見せるため」の制作手法に問題がある、とした意見を出しました。

 フジテレビの報告書では、一般人の出演者に対する細心の配慮が必要だったと総括しています。「番組制作ハンドブック」に、「『サプライズ』という演出手法を一般人に用いる際は、十分な裏付けを取る」などの項目を追加。番組プロデューサーへのアンケートや勉強会も実施しました。

 報告書には外部有識者の意見も掲載されています。同局顧問弁護士の清水英夫氏(青山学院大学名誉教授)は「(報告書の内容は)一般人を起用する際の留意点が中核になっているが…一番の問題点は、スピリチュアル・カウンセリングと称する非科学的、荒唐無稽(こうとうむけい)な霊視を番組の中核に置いたことである」とのべています。


解説

非科学性への反省見られず

 BPOの指摘に対して、フジテレビが社内の議論や取り組みを報告書の形で公開したことは「初めての試み」(同社広報)です。

 しかし、出された結論は、「一般人出演者」や「ドッキリカメラ的手法」への配慮だけ。清水英夫氏が一番の問題点と指摘した「非科学的、荒唐無稽(こうとうむけい)な霊視を番組の中核に置いたこと」への反省や、今後「霊視番組」とどう向き合うのかの記述はまったくありません。

 日本民間放送連盟が定めた「放送基準」には、「占い・運勢判断およびこれに類するものは、断定したり、無理に信じさせたりするような取り扱いはしない」とあります。

 江原啓之氏関連の番組は、霊感商法を生み出す温床との指摘もされています。「『放送基準』が骨抜きされないよう望みたい」という清水氏の提起を、フジテレビ側は真剣に考えるときでしょう。(佐藤研二)


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