2008年3月29日(土)「しんぶん赤旗」

イラク戦闘の背景

首相、孤立に危機感か

サドル師派 米占領反対で対立


 【カイロ=松本眞志】二十五日にイラク南部の都市バスラで発生したイラク軍とイスラム教シーア派のサドル師派民兵組織との戦闘は、イラク中南部全土に広がっています。イラク軍を支援する米軍もヒッラやスンニ派住民が住む中部ティクリットも空爆。サドル師派による昨年八月以来の停戦が事実上破られた結果、イラク情勢はいっそう不安定になっています。


地図

 事件の発端は、米・イラク軍のサドル師派メンバーの無差別拘束だったとされます。治安改善のために政府に協力していたバスラのサドル師派幹部は、突然の事態に「理由がわからなかった」と驚きを示しました。現地メディアの記者は、マリキ首相が事件直後にバスラで指揮をとったことを「異例」だとし、弱体化する政権の治安能力を誇示したかったのではないかと述べています。

 マリキ政権は現在、二国間協定で米占領軍の居座り永続化をねらう米国の支援で政権安定をはかろうとしていますが、世論はむしろ占領反対に傾き、その声は国民の八割にまで達しています。

 孤立を深めるマリキ首相は政権基盤強化をねらい、三月十八日に国民和解会議を開きました。しかし、出席者は招待者七百人のうち、わずか三百五十人。政権基盤の弱体化を印象づける結果に終わりました。

 与党だったサドル師派は、昨年四月に米軍撤退問題でマリキ首相らと対立して全閣僚を引き揚げ、九月には与党統一イラク同盟(UIA)から離脱し、野党に転じました。一方、国民議会内ではスンニ派とも共同して過半数を占める占領反対派を組織し、議会外でも全国会議を開催して「占領反対」を打ち出すなど、反占領の中心勢力として占領当局とマリキ政権とのあいだで対決姿勢を強めていました。

 事件のもう一つの背景に、サドル師派とシーア派与党イラク・イスラム最高評議会(SIIC)との主導権争いが指摘されています。SIICは政府の治安部隊を自派の民兵組織を中心に組織しようとし、サドル師派と争っています。

 事件前の十日、バスラでSIICは治安改善を求める数千人のデモを組織。このとき現地警察幹部は、治安回復のためにマハディ軍を含む武装勢力から武器を押収する計画があると説明し、今回の事件を予兆させる発言を行っています。



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