2008年3月29日(土)「しんぶん赤旗」

ワールドリポート

銀行開設ラッシュ

競争の管理体制に課題

「社会主義志向」守る模索も

ベトナム


 年8%超の経済成長をするベトナムで民間銀行の設立が相次いでいます。世界貿易機関(WTO)加盟から一年余りたち、100%外資の銀行にも初の認可が出ました。ドイモイ(刷新)で市場経済化をすすめながら、路線とする「社会主義志向」を守る模索もされています。(ハノイ=井上歩 写真も)


写真

(写真)ハノイ市中心部にあるベトナム国家銀行。後ろのビルはベトナム外商銀行

 ベトナム国家銀行(中央銀行)は昨年十一月と今年一月、国内最大手の情報通信会社FPTグループの銀行など、計九件の民間銀行の新規設立を原則認可しました。国家銀によると、十二行が認可を待っています。

外資銀行認める

 ベトナムの民間銀行「軍隊株式商業銀行」のグエン・クアン・トアン開発研究・政策室長は「ベトナムの金融市場にはまだ潜在力がある。競争は間違いなく激しくなるでしょうが、フィールドにプレイヤーが一人では発展できない。これはいい兆候です」といいます。

 同行は一九九四年の設立以降、右肩上がりに成長。二〇〇六年末の融資残高は約六兆二千億ドン(約四百億円)と初年度の四百十三倍とし、税引き前利益も約二千百億ドン(約十六億円)と千倍以上にしています。

 「民間銀行は企業、とりわけ民間企業への新しい資金供給源となっています。国営銀行は融資が遅いといって株式銀行に来る人がいます」と同室長。国家銀行のグエン・ゴック・バオ通貨政策局長も「この三年、銀行はよい案件・計画かどうかで貸し出しています。いい現象です」と話します。

 国内資本の銀行に加え、国家銀行は三月、英銀行大手HSBCなど外国銀行二行に100%外資の銀行設立を認可しました。今年、さらに六行の100%外資銀行が認可される見通しです。

 外資銀行への市場開放は昨年一月のWTO加盟にともなう合意で、外資も基本的に国内銀行と同等に扱われます。

 国家銀行のグエン・ドン・ティエン副総裁は本紙の取材に文書で、「いまベトナムの金融は開放をすすめる最初の段階にある。制度は日々整備されている」と述べました。

 ベトナムは「社会主義志向の市場経済」を掲げており、健全な競争をする多セクター経済の中で「国家経済が主導的役割を果たす」(ベトナム共産党大会決議)としています。「国が経済を調節し、方向付け、発展条件をつくりだす」(同)ためとされ、政府は銀行分野を「国営企業を発展させる重要分野」の一つにあげています。

中小企業対策も

 国家銀行のティエン副総裁は「社会主義志向」である面として、「国家銀が金融活動全体を統一して管理し、国の金融機関の主導的役割を保証する政策を持つ」ことにしているとのべました。ただ銀行の競争力強化、国家銀行の管理体制の不十分さなどが課題になっているともしています。

 金融分野で問題となっている新自由主義について、国家銀行のバオ通貨政策局長は「ベトナムは現在も集中的計画経済から市場経済への転換過程にあります。新自由主義の輸入は望んでいないが、それに対応する能力が追いつかず、すきを与えることは防ぎきれない」といいます。同時に「ベトナムの法律と政府は、金融システムにリスクを生む新自由主義、カジノ主義を防ぐため、市場での金融機関の活動をつねによく監視しています」と話しました。

 中小企業への融資対策も実施しており、同局長によると、まず経済環境を保証するためマクロ経済の安定をはかり、各銀行には中小企業、農業、農村への融資比率を高めるよう指導しているといいます。


もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp