2008年3月24日(月)「しんぶん赤旗」

ゆうPress

京都の学生ネットワーク結成

めざせ学費ゼロ


 「高学費のため1年だけの約束で大学に通っている」「バイト漬けで勉強に集中できない」―。高学費に苦しむ学生の声です。京都では学生たちが手をつなぎ「学費ゼロネット」を結成。立命館大学では大幅値上げに歯止めをかけています。(伊藤悠希)


立命館大

スライド制廃止

 「気持ちが楽になりました。学費を払ってくれている親の負担が軽くなると思うとうれしい」と話すのは立命館大学1回生(19)。立命館大学では学費が毎年自動的に上がる「ダブルスライド制」がこの4月から廃止されました。これまで毎年平均で2、3万円値上がりし、4年間で10万円近く上がっていました。今春からは値上げ幅が年5千円(法学部などの場合)に抑えられます。(表)

 学内では、ダブルスライド制の廃止を求める署名や一言カードは学生総数の2割に及ぶ6千人分が集まりました。サークルを中心に学内パレードもしました。

表

だれでも

みんな一緒に

 京都府学連(6大学の学生自治会が加盟)は、「学費ゼロネット」を2007年5月に立ち上げました。ゼロネットは学費値下げに関心のある人なら誰でも入れる個人加盟のネットワークです。11大学、70人が参加しています。

 京都市内の大学で自治会活動をしている琴美さん(22)はゼロネットを考えた一人です。

 「府学連に加盟していない大学で学費値下げの宣伝をすると反応がよかったんです。仕方ないと思っていた学生に話をすると日本の学費は高すぎると実感してもらえました。値下げの取り組みを一緒にやりたいと思いました」

商店訪問

ポスター快く

 会員たちが大学周辺の商店を訪問して、学費無償化を訴えるポスター掲示をお願いすると快く張らせてくれます。街頭宣伝でもうれしい反応がありました。高い学費によって「学問が商業化されることに不安」と話す学生が学内に張りたいとポスターを持ち帰りました。

 京都大学では会員が1カ月近く、2日に一度、昼休みに宣伝をしました。「東京大学では世帯年収400万円以下の学生が授業料免除になりました。今度は京大でも」と訴えると学生たちが話しかけてきました。

 京都橘大学では自治会で学祭に模擬店を出し、訪れた人たちと対話して署名と一言カードを集めました。「薬学部に行きたかったが、学費が高くてあきらめた」と話す男性もいました。地域住民、親たちからも署名が集まりました。

議会要請

全会派が応対

 「学費をめぐり、07年7月の参院選後、政党の応対に変化が起こっている」と話すのは京都府学連副委員長(前委員長)の男性(21)です。府学連の京都市議会要請に対し、06年は日本共産党と民主党だけの対応でした。ところが参院選挙後は、全会派の議員が対応しました。男性は「高学費のため1年の約束で大学に通っているといった学生の切実な声が議員たちにも衝撃を与えました」と話します。

奨学金

就職まだ、返せるか不安

 「学費ゼロネット」の琴美さんは京都市内の大学に通う4回生です。学費は親が負担しますが、生活費は仕送りはなく奨学金が頼りです。無利子と有利子の奨学金を借りています。1回生のころは無利子奨学金(月6万3千円)のみで生活していました。家賃2万円のところに住み、毎日自炊、弁当を作って節約に努め、わずかな額が残りました。有利子分(月3万円)は、できるだけ手を付けないようにして、利子がつく前にまとめて返したいと思っていました。「まだ、就職が決まっていません。返せるかも不安です」と話します。

 立命館大の中山さんもゼロネット会員。無利子奨学金を借りています。これまではお金の出所を意識せず、自由に使っていました。「借金して“ぜいたく″してるだけだと、自治会活動に参加して気付きました。学費のために親は頑張ってくれてると思うと胸が痛みます」

「進学あきらめた」「毎日昼食抜き」

東京でもZEROネット

 ゼロネットの取り組みは京都以外へも波及しています。

 東京でも都学連(東京都学生自治会連合)が中心となり「学費ZEROネット東京」(準備会)ができました。

 19日の結成のつどいでは参加した学生たちが実態を報告しました。

 「2週間前に2年生からの学費のめどがたたないからと退学した学生がいます。入学後、アルバイトで学費をため、綱渡りで大学に通っていた学生です」と話したのは和光大学の2年生。

 東京農工大学では学生会で年に3度アンケートを取っています。半数の学生が回答し、そのうち8、9割の学生が「高い」と答え、学費を自分で払っている学生が約40人いたといいます。「友達が進学をあきらめた」「毎日昼ご飯を抜いている」との声が寄せられました。

 早稲田大学の2年生は、4月に高校3年生になるめいから大学進学をあきらめて就職した方がいいか相談されたといいます。家族や友達など周りに実態を伝えることから始め、学費値下げへ向けた世論をつくっていきたいと話しました。


 京都府学生自治会連合(府学連) 学生自治会の京都府の連合体。学生の共通の要求を実現する組織。学生の要求を大学運営に反映する学生の代表組織。


お悩みHunter

来月就職、労働組合入ったほうがいい?

  4月からの就職をひかえ、少し緊張しています。会社に労働組合があるかどうか知らないんですが、労働組合に誘われたら、入ったほうがいいんでしょうか。どんなことをするところなんでしょうか。あまり組織にしばられたくない気がするんですが…。(22歳、男性、東京都)

加入するメリット大きい

  労働組合は、労働者の労働条件や生活の改善・向上を目的とする団体です。

 労働組合には、使用者と対等に交渉できるように、団体交渉権やストライキなどの団体行動権が保障されています。

 ですから、よりよい労働条件を得るために、個人で使用者と交渉するよりも、労働組合に加入して交渉した方が効果的です。(使用者は、労働組合から団体交渉を要求された場合、正当な理由なく拒むことはできません。【労働組合法7条2号】)

 労働組合に加入して、未払い残業代を支払わせたり、社長の身勝手な賃下げや不当解雇をやめさせた実例は、数え切れないほどあります。

 組織に入ると「縛られる」という考えがありますが、同じ目的を共有し、お互いに学び協力し合える仲間を得ることによって、1人だけの狭い世界から解放されることもあると思います。労働組合には上記の法律上の権利が保障されており、団体に加入するメリットはさらに大きいです。

 ただ、労働組合といってもさまざまです。真剣に労働条件向上のために活動している組合もあれば、形だけの組合もあり、複数の労働組合がある職場もあります。会社に労働組合がないときは、個人加盟の労働組合に加入することもできます。


弁護士 岸 松江さん

 東京弁護士会所属、東京法律事務所勤務。日本弁護士連合会両性の平等に関する委員会委員。好きな言葉は「真実の力」。


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