2008年3月21日(金)「しんぶん赤旗」

個人の銃所有権憲法判断

米最高裁で審理開始


 【ワシントン=西村央】米最高裁は十八日、首都ワシントンの銃規制法が憲法に抵触するかどうかについて判断するための上告審の審理を開始しました。憲法修正第二条が個人による銃所有の権利を認めているのかどうかについての、最高裁としての判断が約七十年ぶりに示されることになります。

 米国では、年間一万人以上が銃犯罪で殺害されています。今年に入ってからでもイリノイ州の大学教室内での銃乱射事件などで多数の死傷者が出るなど、銃犯罪は後を絶っていません。六月にも判断が下されると見られる今回の審理の結果は、各州の銃規制措置にも影響を与えるだけに全米からの注目を集めています。

 この裁判は、個人による拳銃所有を禁止したワシントンの銃規制法は憲法違反だとして、同市在住の警備員が二〇〇三年に同市を訴えたもの。二審の連邦控訴裁判所は〇七年三月、憲法違反との判断を下しました。

 米憲法の修正第二条は「規律ある民兵は、自由な国家の安全にとって必要であるから、人民が武器を保有し、また携帯する権利は、これを侵してはならない」と定めていますが、これの解釈をめぐっては個人による銃所有を認めたものか否か、銃規制の賛否両派による議論が続いています。

大統領選候補者の立場は?

銃規制問題に関心再び

 米最高裁で銃所有の合憲性に関する審理が始まったことで、銃規制問題に米国社会の関心が再び集まっています。ロイター通信は、六月にも出る最高裁の判断が、秋の大統領選に向けた候補者間の論戦に影響を与える可能性を指摘しています。

 民主党で候補指名争いをしているクリントン上院議員、オバマ上院議員はともに、個人の銃所有を認める立場で共通です。

 ただ、クリントン氏は、犯罪者が銃を入手・所持することを禁止すべきだと主張。オバマ上院議員は、銃の購入者が犯罪歴などの経歴審査を受けることを義務づけるとしています。また、未成年者が自宅にある銃で他人にけがを負わせた場合、両親に刑事責任を問うことも主張しています。

 一方、共和党の大統領候補と目されるマケイン上院議員は、購入の際の経歴審査など、銃の規制そのものに強く反対する立場です。

 共和党が銃規制に強く反対し、民主党も銃所有を認める背景には、銃規制反対を強力に唱える圧力団体・全米ライフル協会(NRA)への“配慮”が指摘されます。NRAは三人の候補者の銃政策にそれぞれ“通信簿”をつけ、マケイン氏には「良」、クリントン、オバマ両氏には落第点を与えています。


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