2008年3月12日(水)「しんぶん赤旗」

衝突のイージス艦

自動操舵装置の設置

防衛省 「省力化のため」

本紙に回答

安全軽視の姿勢問題


 海上自衛隊のイージス艦「あたご」がマグロはえ縄漁船「清徳丸」に衝突、沈没させ、親子二人を行方不明にした事故で、衝突の要因と指摘される同艦の自動操舵(そうだ)装置が、ミサイル、レーダー部門などの要員配置を優先した「操船部門の省力化」を目的として装備されたことが本紙の取材で明らかになりました。防衛省が十一日までに回答しました。


 自動操舵については、行方不明になっている親子が所属する千葉県の新勝浦市漁協関係者や海自の元幹部らからも、「東京湾をめざす内外航船や漁場にいそぐ漁船がひしめく野島崎沖の海域で自動操舵は考えられない」と強い批判の声があがっていました。

 五隻あるイージス艦のうち「あたご」だけに自動操舵が装備されています。防衛省は、その理由について、「省力化の観点から付与した」と回答しました。

 防衛省は「あたご」建造での政策評価書で「軍事科学技術の進展に対応しつつ、護衛艦群の防空中枢艦として相応(ふさわ)しい艦隊防空能力を備えることが必要」と要求しています。

 アメリカの本土防衛、先制攻撃戦略の柱としてミサイル防衛を支えるイージス艦は高性能のレーダー、ミサイル発射装置などハイテクシステムを駆使した最新鋭艦です。こうした部門の要員が優先的に配置される一方、艦を操縦する操船部門などは「省力化」の対象です。

 自衛隊関係者は「ミサイル防衛で、自衛艦の花形はミサイル関係の砲雷部門になり、航海部門は冷遇されている」と語ります。

 東京湾でつり客ら三十人の命を奪った海上自衛隊の潜水艦「なだしお」事件(一九八八年)、宮崎沖で海自の練習潜水艦「あさしお」によるパナマ船籍のタンカーへの衝突事件(二〇〇六年)は、いずれも回避義務と安全確認の怠りが原因でした。

 海自はそのつど「安全確認」「再発防止」をかかげてきましたが、現実には“安全軽視の省力化”をすすめていたのです。



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