2008年3月10日(月)「しんぶん赤旗」

列島だより

市民共同発電所

CO2削減 温暖化防ぐ


 二酸化炭素(CO2)の急増による地球温暖化をどう防ぐか。美しく健康な地球を次の世代に手渡す地域や市民の運動が広がっています。自然エネルギーへの転換を目指して資金を出し合い、発電用の風車や太陽電池パネルを設置する「市民共同発電所」づくりにスポットをあてました。(青野 圭)


滋賀・野洲市

地域通貨で寄付金 建設費に

 太陽光発電所の建設費用をどう工面するか。「参加者の誰もが損することなく、地域の内発的発展につながる」ことを目標に、地域協働(市民共同)発電を進める自治体があります。滋賀県野洲(やす)市です。

 これまでに、文化ホール駐輪場の屋根など二カ所に出力計五・五キロワット時の太陽電池パネルを設置。現在、三基目を計画中です。「設置は二基ですが、啓発効果は大きい」というのは同市「まちづくり政策課」専門員の遠藤由隆さん(48)。同企画を通して、省エネ事業に昨年は千世帯、今年は千八百世帯が参加しているといいます。「人口五万人の市で、この人数は画期的です。市民の関心・理解が広がっていることが何よりの成果」といいます。

 同市の特徴は、一九九五年以来の“環境と経済が両立する地産地消のまちづくり”の一環として取り組んでいることです。

 市民が一口千円の寄付をすると、千百円分の地域通貨「すまいる」が交付され、買い物の際に、おおむね5%程度の割引券として使えます。寄付金は全額、太陽光発電に投入され、必要額に達したら太陽光発電の建設が始まります。「太陽光発電寄付者の投資回収は、地域通貨との交換で一瞬で解決できます」(遠藤さん)

 地域通貨が使えるのは、地元業者や農家、公共施設など市内の「すまいる加盟店」です。「すまいる」を使い切るまで、加盟店で買い物をすることになるので、地域の活性化にも貢献する仕組みです。今後、太陽光発電の売電益も加盟店に配分される予定で、年数をかけて事業者負担も解消する計画です。

 「システムづくりが行政の仕事。地方としてやるべきことはやらないと」という遠藤さん。一方で「やはり電力の固定価格買取制度がないとまずいですね。エネルギー促進法の抜本的な改正を求めたい」と話します。

東大阪市の保育園

“お日さまで電気つくるねん”

 「あれで電気つくるねん」「“太陽光のおっちゃん”が教えてくれた」。ハジメ君(6っ)たち年長組の園児はちょっと自慢気です。

 東大阪市北端に位置するポッポ第2保育園(岡喬子園長、定員七十、在園八十七人)の緑色の屋根一面に並ぶ六十枚の太陽光発電パネルが人目を引きます。

 同園では「『誰もが安心して子どもを産み育てられる街づくりに貢献できる保育園を』の理念にかなう建物でありたい」(岡園長)と、二〇〇五年開園の設計段階から太陽光パネルに耐える強度の屋根にしました。

 隣接するゴルフ練習場のネットの影で午前中はやや減るものの、出力十キロワット時、年間一万キロワット時を発電できる「ポッポおひさま発電所」は大阪府内にある十五基の同種発電所中最大。〇六年二月の稼働以来、今年二月末までに二万一千六百六十六キロワットを発電し、火力発電所対比で十四・九トン以上のCO2を削減しています。

 建設費千百万円は、五百六十万円の補助を除いて、約二百五十人の市民の出資や寄付で賄いました。発電量の八割は園で消費し、残り二割を関西電力に売電していますが、関電の買取価格は一キロワット時当たり十八円九十銭。発電原価を大幅に割り込んでいます。出資金の回収は二十年計画ですが、出資した市民は損失覚悟です。

 園児から“太陽光のおっちゃん”と呼ばれているのは、同園に太陽光パネルを設置したNPO法人「自然エネルギー市民の会」の大崎義治事務局次長(60)。「制度をつくっていくのも住民の力。とくに自治体が変わるには住民の運動の力が大事」と園の取り組みを評価。あわせて制度充実の必要を強調します。

 同園の宮村恵事務長(45)も園児の未来を思います。「地球温暖化から北極海のシロクマを助けることと、家の電気を消すことをどう結びつけるか。園児も二十年たてばおとなになりますから、耐用年数は二十年、“おひさま発電所”がある間ずっと伝え続けたい」


無尽蔵の自然エネルギー

買取補償を日本でも

市民共同発電所全国フォーラム全国事務局長

藤永延代さんに聞く

 温暖化防止策の一つは、エネルギー源を自然エネルギーに変えることです。その代表的な取り組みが、市民が少しずつ資金を出して共同で自然エネルギー発電設備を設置する市民共同発電所です。

 私がこのことを痛感したのは、一九九一年にデンマークを訪ねた時でした。林立する風力発電所を見、さらに、その85%が市民個人や共同所有だと聞いて本当に驚きました。電気は電力会社が扱うものと思っていましたから。しかし世界は違っていた。市民がつくった電気が主要なエネルギー源になっている国がある。「日本でも絶対やるぞ」と決意しました。

地産地消で

 自然エネルギーは、エネルギーの産直活動、ローカル・エネルギーの地産地消です。しかも無尽蔵にある。NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)によると、太陽光は世界中で消費している一次エネルギー総量の百七十倍。日本の自然エネルギーは、稼働中の国内原子力発電所総発電量の三十七倍だそうです。

 原発との絶対的な違いは、風も太陽も原料はタダということ。風力・太陽光発電が止まっても、周辺住民に危険が及ぶことはありません。石油のように戦争で輸送が止まることもない。安心・安全・安定なのです。

 国内の共同発電所は九七年の一号基以来、昨年九月現在で百八十五基。総事業費(わずかな補助金以外は市民負担)約二十五億円、総出力一万五千八百四十三キロワット時です。参加した市民は約三万人。省エネで節約分を寄付する市民、企業の支援、廃品回収で地域あげての資金づくりなど百八十五のドラマがあります。国の制度の悪さを市民の知恵が埋めているのが実態です。

普及へ国が

 自然エネルギーの普及手段の一つは、日本のような割当制度です。電力会社に一定割合の新エネルギーの利用を義務づけるものです。現在割当量はわずか1・35%。しかも余った分だけ電気料金と同額で買い取るので太陽光なら一般家庭で約二十四円。大幅な発電コスト(五十―八十円台)割れで、普及の妨げになっています。

 もう一つは、ドイツなどヨーロッパの買取補償制度です。自然エネルギー発電事業者から発電全量を、コストに見合う額で買い取り(ドイツでは七十―八十円)、普及に威力を発揮しています。

 日本は自然エネルギーを奨励する制度になっていません。自然エネルギー買取補償制度の確立が不可欠です。国民の三つの権利―(1)エネルギーを選択する権利(2)生産者として自分でエネルギーをつくる権利(3)国の主権者としてエネルギー政策づくりに参加する権利―が認められるべきです。


自然エネルギーの開発・利用を広げます

日本共産党の政策から

 日本のエネルギー自給率はわずか6%(05年)。政府が頼みの綱にしている原発依存ではなく、自然エネルギーの導入に本腰を入れるべきです。

 地球温暖化防止のためにも、エネルギー政策はかなめです。風力や太陽光・熱、地熱、小水力、波力、バイオマスなどは、地域に固有のエネルギー源です。

 2020年の一次エネルギーにおける自然エネルギーの割合を15〜20%に引き上げることや、自然エネルギーの設備設置への補助を手厚くし、発電量に応じた助成の創設を求めます。(昨年の参院選政策から、要旨)


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