2008年3月9日(日)「しんぶん赤旗」

主張

「世界一高い」学費

国の責任で負担軽減を急げ


 いま、貧困と格差の広がりのもとで、経済的理由で大学を退学に追い込まれたり、進学をあきらめたりする若者がふえています。これはあってはならない事態です。こうした若者を生まないために、国の責任で学費負担の軽減をはかることは、待ったなしの課題です。

崩れる教育の機会均等

 私立大学では、毎年五万七千人を超える退学者のうち「経済的困窮」を理由にしている学生が一万人にのぼります。大学進学率も所得の低い家庭ほど低くなっています。とくに低所得層の女子の私立大学への進学率は低く、高所得層の五割に対して二割です。地方の進学率も下がり、大都市部との格差が開いています。

 「教育の機会均等」が崩壊しつつあることは明らかです。憲法は、すべての国民の「教育を受ける権利」を定めています。経済的理由で教育を受ける機会を失う若者を生まない対策を国は急ぐべきです。

 日本は、学費が「世界一高い」うえに、返還の必要のない給付制奨学金の制度がありません。国際的にもきわめて異常です。OECD(経済協力開発機構)加盟の先進国三十カ国中、大学の授業料を無料にしているのは十五カ国で、二十五カ国は、給付制奨学金があります。

 イギリスなど授業料を無料から有料に切り替えた国でも、給付制奨学金をつくったり、貸与制奨学金の返済を、卒業後一定の収入を得るまでは猶予するなど、経済的理由で進学機会を失わないための対策を充実させています。授業料有料で、給付制奨学金がないのは、日本など三カ国だけです。

 わが国でも東京大学では、年収四百万円以下の家庭の学生について、来年度から授業料を無料にする学費減免制度の実施にふみきりました。父母、学生の切実な声、運動を反映したこの英断は、大きな反響をよび、「うちの大学でも免除枠の拡大を」「すべての大学に免除制度を広げてほしい」との声が、いま全国で広がっています。

 東京大学の水準の学費減免を国の制度にして、国公私立大学すべてに広げるべきです。これは、二千八百六十億円、軍事費の6%、道路特定財源の5%で実現できます。また、欧米のように給付制奨学金の導入が必要です。

 日本共産党の石井郁子衆議院議員が、二月十九日の国会質問で、こうした負担軽減策の実現を政府に迫ったところ、額賀福志郎財務大臣は、経済的理由で教育機会を失うことは「あってはならない」と認めながら、「自己責任も必要」と「受益者負担」を口実に応じませんでした。しかし、憲法で定める「教育を受ける権利」を保障すべき国の責任を、こうした口実で棚上げすることは許されません。

耐え難い奨学金の返済

 政府は、「経済的に困難な人は、貸与制奨学金を」といいます。しかし、大学の学費は四年間で約五百万円(国公私立平均)、生活費などを含めると約一千万円にもなります。これを奨学金でまかない、卒業後返済しろといっても、派遣労働など不安定な雇用が広がっているもとでは、学生にとって耐え難い負担となるのは明らかです。

 政府は、「受益者負担」を口実にした高学費・低奨学金政策を改め、すべての国民に教育を受ける権利を保障した憲法の精神にたちかえって、学費負担の軽減政策―学費の無償化と給付制奨学金の実現、学費免除枠拡大―に舵(かじ)を切り替えるべきです。


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