2008年2月23日(土)「しんぶん赤旗」

主張

派遣法改正

日本社会にとっても不可欠だ


 厚生労働省が違法派遣を繰り返す派遣元企業への規制や派遣法そのものの見直しに乗り出し、派遣先企業でも“派遣工場”と悪名をはせたキヤノンなどが直接雇用への切り替えに動かざるをえなくなっているなど、派遣労働の見直しへの機運が高まっています。

 大切なことは、「日雇い派遣」のような、人間を消耗品として使い捨てる派遣労働を合法化してきた労働者派遣法を労働者を保護する方向で抜本的に改正することです。そのことは、日本社会の前途にとっても避けて通れない課題となっています。

ILO報告でも警告

 かつては「口入れ」や「人貸し」などといわれ、劣悪な労働の代名詞として全面禁止されてきた派遣労働が、労働者派遣法の成立によって認可され、拡大されてきたのは、安上がりな労働力を求める財界・大企業の要求に政府が応じたためです。

 政府は、派遣は「臨時的・一時的」業務に限り、正社員を派遣労働者に置き換える「常用代替」にしてはならないといいましたが、財界・大企業は大量の正社員を派遣や請負の労働者に代え、いまや非正規の労働者は働く人三人に一人、女性や青年では二人に一人という事態にまでいたっています。

 日本経団連会長の御手洗冨士夫氏が会長を務めるキヤノンが、全国の事業所で大量の常用労働者を派遣や請負に置き換え、“派遣工場”といわれているのはその最悪の例です。

 派遣など非正規労働は、労働者をモノ扱いし、労働者に劣悪な労働と非人間的な労働を強制するものです。同時にそれは貧困と格差を拡大し、日本社会全体をゆがめ日本経済のまともな発展を妨げる大問題です。日本共産党の志位和夫委員長が八日の衆院予算委員会での質問で、日雇い派遣など派遣労働の深刻な実態とともに、ILO(国際労働機関)の報告も示しながら、非正規雇用増では持続的な発展は望めないことを告発したのはそのためです。

 志位氏が紹介したILO本部雇用総局リポート(二〇〇七年十一月三十日付)は「低賃金・低保障の非正規雇用拡大は短期的に日本に競争優位をもたらすが、明らかに長期的に持続可能ではない。国内消費の低迷は国内総生産の伸びを抑制する上に、非正規雇用では経済成長の源泉となる人的資本の形成がなされにくい」と警告しています。

 リポートは非正規雇用は技能形成の機会に恵まれず、低賃金を固定化して正社員との所得格差を拡大する弊害を指摘しています。配偶率低下による少子化も深刻です。三十歳代前半(男性)の「有配偶率」は正社員の59・2%に対して非正規社員は30・3%、パート・アルバイトでは18・6%です。日本経済と社会の未来を考えれば、派遣労働の見直しは不可欠です。

安定雇用こそ未来を開く

 志位氏の質問にたいして福田首相は、“中長期的に見た場合、そういう雇用の形は決して好ましくない”と答弁せざるを得ませんでした。志位氏の質問にたいしては今も反響が相次いでいますが、その中でも問題を日本社会全体の問題ととらえ、日本経済の未来のためにもその是正が求められていると共感の声が寄せられています。

 派遣問題をめぐってはいま、与野党を超えて多くの党が改正を求め、労働組合も改正で一致しています。安定した雇用で未来を開くためにも、働く者を守る「派遣労働者保護法」への抜本改正は緊急の課題です。


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