2008年2月18日(月)「しんぶん赤旗」

コソボ、独立宣言へ

セルビアは国際法違反と主張


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 セルビア共和国南部のコソボ自治州が十七日、独立を宣言します。コソボの独立宣言は、セルビアが領土保全を主張して反対しているほか、国連安保理でも合意のないままの一方的なもので、今後、国連などでは独立をめぐって激論がたたかわされそうです。

 州都プリシュティナからの報道によると、コソボ自治州議会は十七日午後三時(日本時間同日午後十一時)からの本会議で独立宣言を採択。同日午後六時からの式典で独立を宣言し、「国旗」が披露されます。二月中に憲法、法規などが順次、決定される予定。

 一方、セルビアは十七日午後四時(日本時間十八日午前零時)からコシュトニツァ首相が演説し、独立宣言は国際法に基づき無効であると訴えます。セルビアは対抗措置としてコソボに対する電力供給停止などの経済制裁措置やコソボのセルビア系住民地域へのてこ入れを決める可能性があります。コソボ・セルビア系住民地域やセルビア本国での大規模な反対デモも予定されます。

 コソボ独立をめぐる国際的な動きも急です。欧州連合は十六日、警察官や裁判官、税関など二千人の要員を派遣することを決定。これまでの国連統治から一歩踏み出した支援を行います。十八日には外相会議で独立承認問題を協議します。コソボに駐屯中の北大西洋条約機構(NATO)軍中心のコソボ自治州国際治安部隊(KFOR)は民族衝突や暴力事件に備えての警戒態勢を敷きました。

 一方、ロシアはコソボ自治州独立宣言が「安保理決議なしの一方的なもので国際法に違反する」とのセルビアの主張を全面的に支持し、国連安保理ではあくまで反対する姿勢です。

 コソボ独立宣言が他の分離・独立への動きを刺激することは間違いありません。旧ユーゴスラビアのボスニア・ヘルツェゴビナでは、分離・独立を求めるセルビア人共和国の動きに注目が集まっています。

 ロシアのラブロフ外相は、コソボ独立を欧米が認めた場合、旧ソ連圏で分離・独立を進める親ロシア勢力、アブハジア自治共和国、南オセチア自治州(以上はグルジア)、沿ドニエストル共和国(モルドバ)への支援強化を表明しました。

 EUの中でも少数民族問題を抱えるスペイン、ギリシャ、キプロス、ルーマニア、スロバキアは独立承認に反対か消極的です。


独立めぐる経緯

 コソボ自治州は人口二百万人中アルバニア系住民が九割を占めます。一九九八年のユーゴスラビア時代から独立運動が過激化し武装闘争に転化。九九年にはアルバニア系住民とセルビア系住民、当時のユーゴスラビア政府(現セルビア政府)が武力衝突し、介入したNATO軍がコソボやユーゴスラビア全域を空爆しコソボを占領しました。その後、セルビアの領土には形式とどまりましたが国連の統治下になっています。

 〇五年に国連統治下で始まったコソボの最終地位交渉では、コソボ側が独立を主張。セルビア側はユーゴ・コソボ戦争終結時の国連決議一二四四でセルビアの「領土保全」を保証していることを根拠にし、高度な自治権付与を提案、決裂していました。


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