2008年2月16日(土)「しんぶん赤旗」
子どもと家族の応援?
政府の少子化対策とは― (2)
仕事との調和いうが
政府の「『子どもと家族を応援する日本』重点戦略」の柱の一つ、「仕事と生活の調和の実現」とは、どのようなものなのでしょうか。
中心にすえられているのは、日本経団連の奥田前会長や連合高木会長らも加わった「ワーク・ライフ・バランス推進官民トップ会議」が策定した「仕事と生活の調和憲章」と「行動指針」です。
「憲章」は、仕事と生活の調和の必要性や国・自治体と企業、労働者、国民が果たすべき役割を示したものであり、「指針」は施策の方針とされています。
「憲章」は、めざすべき社会を、「就労による経済的自立が可能な社会」、「健康で豊かな生活のための時間が確保できる社会」、「多様な働き方・生き方が選択できる社会」としています。
「指針」には、この三つの枠組みを推進するうえでの数値目標として、女性の就業率の引き上げをはじめ、フリーターの数を三分の二に減少、週六十時間以上の長時間労働の半減、有給休暇の完全取得、男性の育児休業取得率を10%に、などがならんでいます。
意識の問題に
めざす社会と数値目標を実現する方向はどう示しているでしょうか。
「重点戦略」は、くり返し「個々の企業の実情に合った効果的な進め方を労使で話し合い、自主的に」取り組むことが基本だと強調しています。そして企業と労働者には、「協調して生産性の向上に努めつつ」意識改革に自主的に取り組むこと、国民には、「一人ひとりが自ら」仕事と生活の調和を考えることを求めています。国は、「国民運動を通じた機運の醸成」や支援をおこなうとされています。
結局ここでいう「仕事と生活の調和の実現」は、労使が協調してもっと生産性をあげる努力をすることを前提とした、労働者・国民の意識改革の問題だというのです。ここには労働時間規制をはじめ、政府の責任で雇用ルールを強化するという、ヨーロッパ諸国や国際条約で当たり前となっていることさえでてきません。これでは数値目標をかかげても、実現の展望はみえてきません。
長時間労働の問題でも、残業する理由のトップは「そもそも所定内労働時間内では片付かない仕事量だから」(二〇〇六年)です。残業時間の規制など企業への規制をさけ、自主性や意識改革を迫るだけでは、いっそうの労働強化と隠れ残業をひろげるだけです。
企業に好都合
「重点戦略」は「就労による経済的自立」をいいますが、働いても年収二百万円以下の人が一千万人を超えているように、自立したくてもできないのが現状です。最低賃金を少なくとも千円以上に引き上げ、パート・派遣の均等待遇の確立、非正規への置き換えに歯止めをかけるなど雇用の安定をはかることなしには、経済的自立が可能な社会はできません。
財界は「仕事と生活の調和」のためとして、八時間労働制の規制をなくすホワイトカラー・エグゼンプション導入を主張しています。昨年国民の大きな反対をうけ見送りになっていますが、あくまで導入しようとしています。これまで以上に長時間働く正社員を核にしながら、子育て中の女性や青年、高齢者を、低賃金でいつでも取り換え可能な労働力として活用し、企業の都合のいいように組み合わせて使おうというのです。
企業に都合のよい「仕事と生活の調和」ではなく、労働時間規制やダブルワークをしないでも暮らせる賃金の保障など人間らしい働き方の実現こそがもとめられています。(女性委員会)

