2008年2月16日(土)「しんぶん赤旗」
主張
鳩山法相暴言
法と人権つかさどる資格ない
いったい何を考えているのでしょうか。無思慮な暴言をくりかえして「軽口大臣」の悪評がすっかり定まった鳩山邦夫法相が、またもや許しがたい発言をしました。
鹿児島県議選をめぐる公職選挙法違反事件で十二人の被告全員の無罪が確定した「志布志事件」について、「冤罪(えんざい)と呼ぶべきではない」と言ってのけたのです。
思慮・分別に欠ける
志布志事件は、犯罪の事実そのものがまったくないのに、警察がでっちあげた事件でした。「踏み字」(親族のメッセージに見立てた文字を記した紙を無理やり踏ませた問題)で知られることになった強引な取り調べをはじめ、被害者は人権を踏みにじる自白強要で、たいへんな苦しみを受けました。
事件では、穴だらけの自白調書と物証なしの警察の捜査をうのみにして起訴した検察の責任も厳しく問われました。鳩山法相は、こともあろうに、その検察の幹部を集めた会議(検察長官会同)で、この発言をしました。法務、検察の権力乱用を抑える立場にある法務大臣が、被害者の側に立って検察の責任を追及するのでなく、逆に検察擁護の発言をするとは、とんでもありません。
法相が「冤罪でない」という発言をすることは、すでに無罪が確定した裁判での判決をくつがえし、元被告らを「本当は無罪ではない」と決めつけるにも等しいことです。国と県を相手取り国家賠償請求訴訟をおこしている元被告らが、鳩山氏の発言にたいして、「人権侵害を受けて、さらに追い討ちをかける発言。許しがたい」と厳しく抗議する声明を出したのも当然です。
鳩山氏は十五日の記者会見で、「(被害者に)不快な思いをさせたのであればおわびしたい」と謝罪しましたが、志布志事件が冤罪だったのかどうかについては「答えない」とのべました。結局、自分の発言の何が問題なのか理解しておらず、何の反省もしていないのです。
鳩山氏はこれまでも、死刑の執行を法相の署名無しに「自動的」にすることを求めた発言や、バリ島で起きた爆弾テロ事件にかかわって「私の友人の友人がアルカイダだ」とした発言など、法相としての自覚に欠ける暴言を重ねてきました。
これらが大きな問題になり、社会的な批判を呼んだにもかかわらず、鳩山氏は筋の通らない弁明をしただけで、一つとして発言を撤回していません。およそ大臣としての発言の重みを理解しておらず、政治家としての思慮分別も欠いていると判断されてもしかたありません。
町村信孝官房長官は鳩山氏の発言について、「子どもじゃないので、いちいち申し上げない」とのべ、直接注意する考えはないことを明らかにしました。しかし、暴言をくりかえしながら、過ちを反省し改めようとはしない鳩山氏の態度を内閣として容認することは許されません。
任命責任が問われる
日本共産党の志位和夫委員長は十四日の記者会見で、「法務大臣というのは、法の厳正な執行に責任を負っているわけで、その大臣が法秩序のイロハをわきまえない発言をくりかえしているというのは、資格、資質にかかわる」とのべ、問題の所在を、国会の質疑を通じて明らかにする必要性を強調しました。
ことは、法と人権をつかさどる法務大臣の資格、資質にかかわる問題です。このまま、居座りを許すようでは、福田康夫首相の任命責任そのものが問われます。