2008年2月9日(土)「しんぶん赤旗」

主張

派遣法改正

貧困の打開に最優先の課題だ


 読売新聞とイギリスのBBCの調査によれば、経済的格差に不満を感じる人は、日本は83%と、サミット(主要国首脳会議)参加八カ国のなかでイタリアの84%に次いで高いという結果が明らかになりました(「読売」八日付)。いま日本経済と国民生活にとってもっとも大事なことは、この貧困と格差を打開し、「底が抜けた」といわれるほど悪化した国民の暮らしを立て直すことです。

 根源には、雇用の不安定化、労働の劣悪化があります。なかでも派遣労働の増大は、中核をなす大問題です。日本共産党の志位和夫委員長は八日の質問で、この問題に絞って政府を追及しました。

モノ扱いで人間性を否定

 もともと禁止されていた派遣労働が合法化され、「規制緩和」が繰り返されてきた結果、派遣労働者はいまや三百二十一万人に上ります。その七割が「日雇い」など登録型派遣で、仕事があるときだけ雇用される不安定で異常な低賃金、しかも危険な労働に従事させられています。志位氏はその実態を突きつけながら、まず日雇い派遣の禁止を迫りました。

 日雇い派遣で深刻なのは、人間を文字通り消耗させる究極の非人間的労働となっていることです。日雇い派遣の労働者が従事しているのは、企業にとってその日限りの業務ではありません。派遣労働の自由化が正社員から仕事を奪い、労働者をモノ扱いする日雇い派遣という働かせ方をつくり出しているのです。

 志位氏が繰り返し福田康夫首相の認識をただし、こうした働かせ方が際限なく広がる社会にしていいのかと迫ったのにたいし、首相も「日雇い派遣は、決して好ましくない」とのべました。そうであるなら直ちに日雇い派遣を禁止し、安定した仕事へ転換をはかるべきです。

 現行派遣法は、グッドウィルなど派遣大手が違法な派遣で摘発されても行政処分しか受けていないように、派遣元企業の保護法にしかなっていません。派遣先企業は、違法な派遣が明らかになっても何の処分もなく、企業名さえ公表されていません。

 政府は、派遣労働をすすめる際に「(派遣は)臨時的、一時的なものに限定し、常用雇用の代替にしてはならない」と繰り返し言明しました。しかし実態は、正規雇用が大量の非正規の派遣労働者に取って代えられているのです。「常用代替防止」のため、派遣先企業は一定期間たてば常用雇用にすることを申し出なければならないのに、実際には短期の雇用契約を繰り返し更新しています。具体的な調査にもとづく志位氏の質問に、舛添要一厚労相も「法令違反だ。企業に助言、指導する」と答えざるを得ません。

 とりわけ、志位氏が、独自に入手した内部資料を示し、「工場まるごと派遣への置き換えであり、これでは派遣工場だ」と追及したキヤノンのケースでは、福田首相も、厚労省による実態調査を約束しました。独自の調査力を発揮し動かぬ証拠を突きつけた志位氏の追及に、政府も無法をかばい切れなかったのです。

実態直視し直ちに改善を

 志位氏は、労働者派遣法を「派遣労働者保護法」に抜本改正するために、違法行為があれば派遣労働者を正社員とみなすことや、「常用代替防止」の明記などを迫りました。

 福田首相は国民生活重視を繰り返しています。それが本気なら切実な声に応えるべきです。未来を担う若者の可能性を伸ばし、社会の担い手が成長するためにも、人間らしい雇用のルール確立は急務です。



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