2008年2月5日(火)「しんぶん赤旗」

社会リポート

山口・岩国基地 滑走路沖合移設埋め立て

市民や市長の意見聞かず

変更申請 県が一方的判断


 中国四国防衛局による米海兵隊岩国基地の「滑走路沖合移設」に伴う公有水面埋め立て事業の一部変更申請をめぐって、許可権をもつ山口県に対し住民への縦覧、地元首長の意見照会などの手続きを求める声が相次いであがっています。海兵隊の戦闘攻撃機などの騒音被害を軽減させるためとしてきた移転事業の目的を変質させ、厚木基地(神奈川県)からの米空母艦載機の移駐に必要な内容を含んでいるからです。(山本眞直)


 山口県は一月八日に変更申請を防衛局から受理しながら、いまだに内容を公表していません。

 問題を重視した日本共産党山口県委員会、同県議団は防衛省との交渉のなかで申請内容を明らかにさせました。

 同省の担当官はこのなかで「米空母艦載機五十九機の岩国基地への移転に必要な『岩国基地の機能配置計画』(マスタープラン)のうち詳細が固まったものを盛り込んだ」として三点の修正をあげました。

 滑走路に並行する誘導路の建設、護岸の撤去時期の変更のほか、「特に住宅の多い地域で騒音レベルが低下し、現況より騒音障害が緩和される」との騒音予測を「ごく一部の区域では現状より増加するものの、ほとんどの区域では現状より軽減される」――の三つです。

決議に反する

 防衛省交渉に参加した日本共産党の久米慶典県議はこう指摘します。

 「今回の変更内容は、海兵隊の戦闘機などの騒音被害を軽減させるためとしてきた移設事業の目的を変質させる重大な変更です。『これ以上の基地機能の拡大、強化は容認できない』とした県議会決議にも反するものです」

 住民投票で艦載機移転に圧倒的な多数で「ノー」を示した地元、岩国市。この民意を受けとめ井原勝介前市長も明確に移転反対を表明しています。

 昨年十二月、井原市長(当時)は月橋晴信中国四国防衛局長との協議のなかで変更問題に言及。

 同市長は、空母艦載機部隊の岩国移駐は「沖合移設の目的を根本的に変えるもの」との立場から公有水面埋立法に違反するとの判断を示して「少なくとも騒音に関し法に基づく環境影響評価の実施」などを求めています。

ルールを逸脱

 日本共産党県委員会、県議団は、変更の可否について、住民への縦覧や利害関係人の意見書提出、地元首長の意見照会もせず内部協議で結論を出すのは「住民自治、団体自治という憲法で定められた地方自治のルールを逸脱した暴挙」と批判。一月二十八日には二井関成県知事に対し、環境影響評価のやり直し、縦覧や意見照会など法に基づく手続きの実施を要請しました。

 県側は、「住民への縦覧は、公有水面埋立法では用途の変更の場合に行われるもので、今回は当てはまらない」との判断です。

 久米県議はこう訴えます。「県が変更申請を許可しなければ、艦載機の移転という米軍再編は不可能になる。このような重大な問題を住民や自治体の意見も聞かず、県が一方的に判断することはあまりに非民主的です」

 瀬戸内海の静かな環境を守る住民ネットワークの河井弘志代表世話人は「移設事業の目的外の艦載機移転での変更である以上、当初行ったと同様に住民への縦覧、首長からの意見照会は当然やるべきこと。それでなくとも岩国のみならず私の住む大島町や周辺地域など広い範囲で艦載機の騒音や事故への不安が広がっており、その意味でも住民への説明、納得が欠かせない」と強調します。



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