2008年2月3日(日)「しんぶん赤旗」

欧州司法裁 法務官が意見提出

職場での障害者差別禁止

介護者にも適用

600万人に「劇的な変化」


 【ロンドン=岡崎衆史】職場で障害者に対する差別を禁じた欧州連合(EU)法は、障害者を介護する者にも適用される―。欧州司法裁判所(ルクセンブルク)の法務官が一月三十一日に提出した意見が大きな反響を呼んでいます。

 法務官が扱ったのは、障害児の母親(英国人)が、介護のために勤務形態の柔軟化を求めたものの拒否され、退職を余儀なくされたとして元雇用主を訴えた問題。法務官は、雇用主の対応は差別禁止法に違反するとしました。司法裁判決に先駆けて出させる法務官の意見表明は、判決を拘束するものではありませんが、これまで約八割の判決がこれに沿った内容となっています。

 判決は五月までに出る予定。差別禁止法が介護者にも適用されるとの意見に沿った判決が出た場合、障害者や病人の介護に携わる英国内の六百万人の労働可能人口の生活に「劇的な変化」をもたらすと英BBC放送は報じました。

 原告のシャロン・コールマンさん(41)は法務官意見に対し、「介護の責任を果たしている人への職場での不適切な扱いや嫌がらせをやめさせる方向に一歩近づいた」と歓迎しました。

 コールマンさんはロンドンの法律事務所に勤めていた二〇〇二年、息子のオリバー君を出産。オリバー君は呼吸障害をもって生まれたため、コールマンさんは介護のため勤務形態の柔軟化を求めました。

 しかし、事務所側はこれを認めず、コールマンさんは〇五年三月、退職を余儀なくされました。コールマンさんは法律事務所が、他の職員には自宅勤務などを認めながら自分には認めず、職場での差別を禁じる法律に違反すると提訴していました。

 裁判では、障害者への職場での差別を禁ずるEU法が、その介護者にも適用されるのかが争われています。

 意見を出したミゲル・ポヤレス・マドゥーロ法務官は、「本人を直接攻撃対象にすることだけが差別ではない」「尊厳と自立を奪うやり方には、本人ではなく、彼らに身近にかかわる第三者を標的にすることもある」と指摘しました。


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